政権の外資へのおそれと、“中国式教育”からの逃避

 ついでに習近平政権は“英語教育とセット”になって中国に入ってこようとする「西洋の価値観」も断ち切る考えのようだ。学習塾を上場させないとしたのも、外資の教育産業への介入を制限するためだろう。中央政府は、中国の子女たちのデータ流出も懸念している。

 学習塾に対する規制強化が公表されたのは、東京五輪が開幕した直後だったが、中国では一部の親が「中国勢の金メダル」そっちのけでこの話題に高い関心を向けた。これまでも何度となく試みられた“教育改革”は成功した試しがないため、今回も多くの中国人が「習近平の本気度」を探っている。

 しかし、今回の是正措置も元のもくあみとなる可能性が強いだろう。東京に在住する中国出身者が「娘の教育費は毎月20万円」だと話していたが、これが意味するのは、中国だろうと日本だろうと、どこにいても中国の親がやることは決まっているということだ。

 子どもに最高の教育を与えたいとする中国の親たちの願望と子どもへの過干渉は、いまさら習近平政権がジタバタしたところで変わりようがない。この「絶対的な価値観」がある限り、学習塾の水面下の跋扈(ばっこ)は続くだろうし、世の中に嫌気が差した若い世代はますます子を産まなくなるだろう。ちなみに、一部の中国人留学生の来日動機には、親や政府が主導する“中国式教育”からの逃避がある。

 中国の“伝統的詰め込み教育”は、中国の諸問題の根源の一つだと言っていい。水面下では「親の要求」「中央政府の方針」、そして「新世代の価値観」が激しくぶつかり合い、そこに塾産業や住宅産業が絡んで市場が過熱、今や人口減少にまで発展する複雑な問題を呈している。教育をめぐる攻防、この先どんな展開を見せるのだろうか。