ロシア人とバーニャ文化

 ロシアにおけるバーニャの歴史は非常に長く、バーニャにまつわる慣用句もいろいろある。「バーニャに将軍はいない」(=バーニャでは上下関係はない)、「バーニャに行け」(=落ち着け)、「軽い蒸気おめでとう!」(=バーニャから出た人にかける言葉)といった具合で、こうした多くの慣用句が、ロシアにおけるバーニャ文化の深さを表している。

 また、日本人にとっては、大みそかには紅白歌合戦が定番だが、ロシアでは大みそかの夜には「運命の皮肉」という有名なソ連映画がテレビで流れ、これを見るのが定番となっている。「運命の皮肉」は、主人公がバーニャで酒を飲みすぎてつぶれてしまうところからスタートする。それくらい、ロシアのバーニャ文化に密接なつながりがある映画なのだ。

掘っ立て小屋から高級店までバーニャはさまざま

サウナブームで注目、フィンランドの次にくるロシア「バーニャ」の楽しみ方シベリアで入った小屋タイプのバーニャ Photo by Y.N.
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 一口にバーニャと言っても、さまざまな種類がある。シベリアの掘っ立て小屋の中に作られたものもあれば、モスクワのど真ん中の高級店まで、いろいろなタイプのバーニャが存在する。

 筆者は以前、モスクワの高級バーニャ「サンドゥニ」に行ったことがある。利用料だけで2時間2800ルーブル(約4600円)、さらに個室になるとその値段は跳ね上がる。しかし非常に人気があり、夕刻時になると黒塗りの高級車が押し寄せて、夜な夜なバーニャの個室で密談が繰り広げられるのだ。

 ロシア連邦初代大統領エリツィン氏も大のバーニャ好きで、故・橋本龍太郎首相を自宅に招き、バーニャを共にしたという。