時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

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経営理論を信じてはいけない

 経営理論を発信する経営学は科学の一分野です。

 企業の業績を上げるための事業成功の考え方や、企業活動の健全化のための法則性などを追及していきます。

 そしてそのメッカである米国の経営学者たちの興味は、誤解を恐れずに言ってしまえば、自分の発見したユニークな理論をいち早く発表し、名乗りを上げるレースに勝つことです。

 どのような理論でも、それが現実に使われるためには、その適用のために前提を整えることが必要であり、かつその法則性だけでは不足している条件を補い、調整しなければなりません。そしてさらには理論の段階では読み切れていなかった、発生する様々な課題への対応が必要です。

「経営理論を信じてはいけない」

 早稲田大学大学院ビジネススクール教授の入山章栄氏が、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』に44回に渡る長期連載を寄稿され、その最終回でこう明言されました。

 この連載内容は、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)として刊行され、この書の締めもこの言葉になっています。

 私自身もマッキンゼー在籍の頃から、様々な理論やフレームワークなどを使う機会を経験してきました。戦略や組織の理論やフレームワークは、自転車を初めて乗る時と同じで、乗りこなす、使いこなすには、ある程度の習熟と腕が必要です。

 企業では経営企画室あたりが安易に「事業部にこのフレームワークで報告させよう」と発信することがありますが、それは受け取った側にはかなりの迷惑で、負担となることも多々あります。

 もし、実際に現場の実務などで使うならば、その前に実験的に、何人かのリーダー格のマネジャーを呼んで記入してもらい、問題点や修正点の炙り出しや、ガイドラインを用意するために補足すべき事項の明確化が必要です。