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“簡単な事務と電話番くらい。すごく楽な仕事だし、ヒマなときはテレビを見ていていい” 素晴らしい条件の募集に応募して正社員になったが、実際に働きだしてみると、いろいろと話が変わってきた。出社は1時間早くなり、昼休みがない、これは実質的に、労働時間が2時間増えていることになるのでは?社員と社長の言い分が食い違うなか、社労士の答えは……。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
製造業で従業員数50名。

<登場人物>
A子:25歳。7月から甲社の事務職。
B:甲社の社長で50歳。出張が多くほとんど会社にはいない。先代社長の娘であるC専務には頭が上がらない。
C:甲社の専務で社長夫人。
D子:B社長の娘で甲社の取締役。
E:Bの中学校時代の友人で社労士。

オリンピックを見ながらできるくらい、ヒマで楽な仕事

「お仕事は簡単な事務。大型8Kテレビでオリンピックを見ながらサクサクできちゃいます」

 6月下旬、先月まで勤務していた会社を辞め、楽な仕事を探していたA子は、インターネットの求人サイトで見た甲社の求人広告に目が留まった。募集内容を確認すると、甲社の所在地は何と自宅から歩いて30分の距離。A子はすぐに甲社に電話をかけ、次の日にB社長と面接をすることになった。

 B社長はA子が持参した履歴書を見ながらいくつかの簡単な質問を行った後、その場で採用を決めた。そしてA子に改めて雇用条件の説明をした。

<A子の雇用条件>
  勤務時間:月~金曜日の8時から17時まで(週40時間)
  休憩時間:12時から13時まで
  休日:土、日、祝日、その他
  給与:日給8000円
  正社員で雇用、試用期間は設定なし。
  仕事の内容:電話番、来客の応対、簡単な事務など。

 説明後、B社長から「何か質問はありますか?」と聞かれたのでA子は「あのう、オリンピックを見ながら仕事ができるって本当ですか?」と尋ねた。するとB社長はニッコリした。