世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。
数字で見る「アメリカ・ファースト」
2018年のアメリカ合衆国の貿易相手国は、カナダやメキシコ、日本、中国が上位を占めています。特にカナダやメキシコは「陸続きの隣国」であり、1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)が大きく関係していました。元は1988年の米加自由貿易協定の締結に始まり、その後メキシコが加わって、巨大な経済圏を作り出しました。
多くのアメリカ企業がメキシコへ工場を移転し、安価な労働力を活かして工業製品を生産。それをメキシコからアメリカ合衆国へ輸出するという構造ができあがりました。その結果、アメリカ合衆国では就業機会が減少していきます。
1955年に起きたワンダラーブラウス事件をご存じでしょうか。
日本の対米ブラウス輸出の急増を背景に、アメリカ合衆国が日本に対して綿製品の輸出自主規制を求めた事件です。日米貿易摩擦問題の初端と考えられています。その後、1965年より対日貿易赤字が常態化するなど、アメリカ合衆国と日本の間にはながらく貿易摩擦が生じています。
1980年代初頭の自動車貿易摩擦、高まるジャパンバッシングを背景に、1985年にはプラザ合意によって強制的に円の価値が高められていきました(円高の進行)。この後、海外での現地生産が進み、日本では「産業の空洞化」が起こりました。
近年、アメリカ合衆国では、「世界の工場」となった中国との貿易額が増加傾向にあり、最大輸入相手国となっています。
しかし2019年統計では、中国向け原油や対中輸入の機械類などは減少しました。これは前トランプ政権下での米中貿易戦争が背景にあるといえます。