「ロシア&OPEC」との石油戦争

 貿易品目をみていきましょう。2018年の輸出品目は先進国なだけあって「1位機械類、2位自動車」となっています。3位以下は石油製品、精密機械、医薬品、プラスチックと続きます。

 近年では、シェールガスやシェールオイルの生産を増やし、2019年9月には、1949年以来70年ぶりに単月の原油純輸出国(輸出量が輸入量より多い)となりました。これによって、アメリカ合衆国と「ロシア&OPEC」との石油の価格支配力の奪い合いが予測されます。

 これまでのOPECは、石油価格が下落すると減産に踏み切るなど、圧倒的な価格支配力を持っていました。それもそのはず。世界に占めるOPECの産油量の割合が大きく、彼らの「言い値」をのむしかありませんでした。

 そこにアメリカ合衆国が産油国として台頭してきました。ロシアは世界最大級の産油国であり、原油や天然ガス、石油製品が主力の輸出品であるため、「アメリカ合衆国の台頭によって石油価格が下落すること」は容認できません。そのためOPECと歩調を合わせてアメリカ合衆国に対抗しようとします。

 しかし、OPECの盟主であるサウジアラビア(スンニー派)とイラン(シーア派)は同じイスラームでも宗派が異なります。OPECは一枚岩にはなりにくい環境にあるのです。

 また近年では、インドやオランダ、台湾に向けた原油の輸出が拡大しています。また輸入品目(2018年)は機械類が最大で、以下、自動車、原油、医薬品、衣類、精密機械、石油製品と続いており、中国だけでなく、メキシコからの自動車、アイルランドからの複素環式化合物、ベトナムから電話機などの輸入が増加しています。

「もっとアメリカに雇用を!」

 2020年7月1日、それまでのNAFTAに代わってアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が発効しました。両協定の大きな違いは、「原産地規則」の見直しです。自動車企業が自動車の無関税輸入をするさいの基準が大幅に厳格化されました。

 具体的には、アメリカ企業がメキシコで自動車を生産して、それをアメリカ合衆国に輸入する場合、①時給16米ドル(およそ1800円)以上の賃金労働者による生産比率を40~45%とすること、②「域内原産比率」をそれまでの62.5%から75%に大きく引き上げることが盛り込まれました。

「域内原産比率」は「[(物品の純費用)―(非原産材料価額)]÷(物品の純費用)×100」で算出します。さらに、特恵関税(発展途上国、または地域を原産地とする特定の輸入品に対し、一般よりも低い税率の関税)の適用条件として、鉄鋼やアルミの70%以上を域内で調達することが設けられました。

 つまり、「安価な労働者にばかり作らせず、給料の高い人にも作らせろ! そして、自動車部品の75%以上は北米地域で作られた部品で組み立てろ!」ということです。

 アメリカ合衆国に雇用を創出する意図がみえます。日本企業への影響も小さくなく、アメリカ合衆国での現地生産、雇用の拡大を余儀なくされることとなりそうです。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)