高本眞一・賛育会病院院長2021年4月1日、賛育会病院院長に就任した高本眞一氏は心臓血管外科の重鎮医師だ 写真提供:賛育会病院

 「医師にずっとそばにいてほしかった。見捨てないでほしいとただひたすら祈った」――。日本を代表する心臓血管外科医である高本眞一氏は、13年前に妻を乳がんで亡くし、医師であると同時に患者の家族になった。当時の痛切な思いがあるからこそ、「患者さんとともに生きる」を信念に今も医師と患者の信頼関係の改善に努めている。そんな高本氏の目に、コロナ禍に見舞われる今の日本の医療現場はどう映るのか。(えむでぶ倶楽部ニュース編集部 赤羽法悦)

『患者さんに伝えたい医師の本心』を
執筆した心臓血管外科の重鎮

 東京スカイツリーがそびえる東京都墨田区。JR錦糸町駅からほど近い、社会福祉法人賛育会が運営する賛育会病院(199床)の院長に今年4月1日、心臓血管外科の重鎮である医師が就任した。高本眞一氏だ。

 2015年7月に、『患者さんに伝えたい医師の本心』(新潮新書)を出版するなど、医師と患者の新たな関係を模索しようとしてきた。高本氏は医師と患者は対等な関係で「患者さんとともに生きる」を信念に、患者に対して「頑張ってください」ではなく、「一緒に頑張りましょう」と言うようにしている。

『患者さんに伝えたい医師の本心』書影高本氏が執筆した『患者さんに伝えたい医師の本心』(新潮新書)

 高本氏は、心臓血管外科手術中の脳虚血を防ぐ術式である「高本式逆行性脳循環法」を開発し、弓部大動脈瘤手術の成功率を飛躍的に高めた実績などがある。一方、国が15年10月にスタートさせた医療事故調査制度(医療事故調)の大本になった、厚生労働省の補助金事業「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」(以下、モデル事業)の運営委員会委員などを務め、医療事故調発足に向けて積極的に発言を続けてきた。