医師会らが急に「方針転換」し始めた理由

 まず大きいのは、2月に成立した改正感染症法であることは言うまでもない。

 ご存じのように、この改正によって、厚生労働大臣や知事が、医療機関に必要な協力を求めることができ、正当な理由なく応じなかった場合には勧告した上で、従わなかった場合は、医療機関名を公表できる規定が盛り込まれている。

 もちろん、公表までいくことは滅多にない。が、これが「コロナ総力戦」への全面参加に後ろ向きだった医師会にとって、大きなプレッシャーになったことは想像に難くない。

「病院経営の観点で、コロナ患者を断ってきた開業医」が勧告の対象になる恐れがあるからだ。この最悪の事態を避けるため急遽、「コロナ医療に全面的に協力」と方針転換をしたと考えれば全てつじつまが合う。

 国や自治体から厳しい規制・監督下に置かれる業界の方たちはよくわかると思うが、もっとも有効な規制対策というのは、規制を先回りして「業界団体などによる自主ルール」を設けることだ。

 お上からゴチャゴチャうるさいことを言われる前に、「ほら、我々もちゃんとやってるでしょ」と示すことで、国や自治体から厳しい規制が敷かれることや、社会からの批判をそらすのだ。

 東京都医師会の「180度方向転換」もこれと同じなのではないか。

 改正感染症法は言わずもがな、コロナ患者をなかなか受け入れくれない一部の民間病院にコロナ医療への参加を促し、「総力戦」にもっていくという規制的な側面がある。だから、開業医の業界団体である医師会としては、国や自治体に厳しいスタンスで運用されないようにクギを刺しておく必要がある。

 つまり、この法律に基づいた要請がなされる前に先回りして、「ほら、そんなことを言われる前に、もうとっくに医師会の開業医などはちゃんとやってますから」と示しておくのだ。

 それが、「自宅療養者・待機者の24時間体制での見守り」ではなかったか。