方針発表の背景には、政治的駆け引きと
「救急車たらい回し」の影響?

 尾崎会長が「24時間体制での見守り」の方針を発表したのは13日。その10日後、厚生労働省と東京都が、改正感染症法に基づいて、都内の全医療機関に連名で新型コロナウイルス対応への協力を要請している。小池百合子都知事と尾崎会長はコロナ対策で連携をしているので当然、このような要請が行われることは事前に知っていたはずだ。

 このような「政治的駆け引き」に加えて、個人的には「救急車のたらい回し」の増加も影響を及ぼしたのではないかと思っている。

 菅義偉首相が、感染拡大に歯止めがかからないので、「医療提供体制の拡充」を進めると宣言した今月17日の翌日、千葉県市川市の62歳男性のもとに救急車がかけつけた。

 自宅のトイレで倒れて意識不明となっているところを家族が見つけ、熱をはかったら39度近く。脳梗塞や脳卒中などは、どれだけ早く適切な治療を受けることができるかで、回復はもちろん命にも関わる。時間との勝負だ。

 しかし、この男性が病院に搬送されたのは約4時間後。30の病院から受け入れを拒否されて、たらい回しにされたのだ。最終的に、自宅からおよそ50キロ離れた病院が受け入れてくたというが、男性は死亡した。「最終的に感染は確認されなかった」(テレ朝news 8月24日)そうで、脳出血が見られたという。市消防本部はマスコミにこうコメントしている。

「すぐに病院に搬送したかったが、発熱の症状があると、受け入れ先を見つけるのが非常に難しい状況になっている」(朝日新聞デジタル8月25日

 前日には、コロナに感染した妊婦がやはり「たらい回し」をされて、新生児が亡くなるという痛ましい出来事があった。総務省消防庁によれば、8月16日から22日で全国の消防本部から報告された「救急搬送困難事案件数」は3207件で、コロナ以前の令和元年同期比で+222%となっている(資料)。

 ちなみに、「救急搬送困難事案件数」とは医療機関への受け入れ照会4回以上で現場滞在時間30分以上だ。つまり、今の日本では、救急車を呼ぶような事態に陥った人は、30分以上のたらい回しくらいは覚悟しておかなければいけなくなっているということだ。

 という話を聞くと、「こんな医療崩壊の最中に、オリパラをやった政府が悪い」「フジロックでバカ騒ぎをするような連中のせいだ」「自粛に従わず酒を出す飲食店の罪は重い」などなど、怒りと憎悪が爆発しそうな方も多いことだろう。

 が、一方でそうとも言い切れない現実もある。実は「救急車のたらい回し」というのはコロナ以前から定期的に起きている。