>>(上)より続く

 尾行しているうちに対象者が人混みに紛れたら、満員電車に乗ったら、大きな会社から一斉に数百人出てくる状況になったら、マスクをしていたら、傘を差していたらなどなど、いかなる状況でも対象者をキャッチ(見つけること)しなければならず、インプットした情報から瞬時に正解を割り出さないといけないのです。

 調査業の初現場に入って1時間弱では、それらが全く理解できていませんでした。

 先輩探偵は教えてくれません。テクニックは盗むものなのです。職人気質のレッドスターは対象者を追って私の視界から消えました。

 30分くらいたった頃にレッドスターからメールがきて「新宿方面」と指示があり、コインパーキングの精算をして車を発車させました。

 その後、対象者が会社に入ったとの連絡があり、私は現場へ向かいました。

 レッドスターの誘導で停車させ、入り口は一つしかないとのことで、15時46分にその場で車での張り込みを開始しました。

 レッドスターから、対象者の出社までの様子を聞かせてもらいました。

 最寄り駅まで歩いて電車に乗り、真っ直ぐに会社に入ったとのことでした。特に周りを気にする挙動はなかったが、ずっとスマホで誰かとメッセージのやりとりをしている様子だったそうです。

 今晩、浮気するかどうかはまだ分からないが、会社から出てきたらレッドスターが徒歩で追って、私はその後の指示に従うというシフトで認識を合わせました。

張り込みの難しさとつらさとは
対象者が会社から出てきた!

 その後、対象者が出てくるまでの約3時間、張り込みの難しさとつらさを味わいました。人間が一点を集中して見続けることが、いかに大変かを思い知りました。別案件で数日間という長時間の張り込みも経験しましたが、一点を集中して見続けなければならない状況が、どれほど人間の視覚や脳や精神に影響を及ぼすか、やってみないと理解できないと思います。その体験についてはまた別の機会にお伝えしたいと思います。

 その後、18時を過ぎると、何十人も仕事を終えたサラリーマン風の人々が会社から出てきました。