ありのままの生き方の落とし穴

「自分らしさ」にこだわる人ほど<br />幸せになれない<br />意外だけど納得の理由Photo: Adobe Stock

──では、そもそも「自分らしさ」を追い求める生き方をやめたほうがいい、と。

バク:やめたほうがいいですね。「自分らしさ」にこだわってしまう人って、自分への期待値が高すぎるんですよ。だから、その思い込みを捨てないかぎり、「自分はこれくらいできるはず」「自分は本気を出したらすぐにこうなれる」「私はまだ本気出してないから……」と言い訳しながら、何もやらない状態が続いてしまう。

 でも一方、ふと冷静になってみると、これまでに何もなし得なかった自分がいる。それで、夜中に「なんでこんなことになってるんだろう……」と落ち込んだりするんですけど、そりゃ、あなたが何もしてこなかったからでしょ、としか言いようがなくて。

 結局、今の自分は、これまでの選択の結果でしかないんです。どうしても人間は「運が悪かったせいだ」「タイミングが悪かったせいだ」「景気が悪かったせいだ」って他人のせいにしたがりますけど、「こんなはずじゃないのに、何をやってるんだろう」と嘆いている自分になってしまったのは、他の誰でもない、自分の意思なんですよ。その事実を、まずはきちんと受け入れたほうがいいですね。

 とにかく、自分は本来こうであるはずだ、という設定が高すぎるんですよね。多少高いくらいならいいんですけど、高すぎる目標を「できるはずだ」と思っていると、毎日挫折の連続になってしまいますから、できる範囲の目標設定をするのが大事だと思います。

──本のなかにも、工夫次第で「そこそこの幸福」は手に入れられる、と書かれていましたよね。

バク:はい。ただね、「そこそこ幸せ」な日を続けられているのだとしたら、それはめちゃくちゃ幸せな人生だと思うんです。たとえば仕事で新しい企画のプレゼンをしたら反応がよかった。その帰りに買ったビールをお祝いがわりに家で飲んで、「うまっ!」と満足して寝る……。そういう日が週に3日くらいあれば、それは最高に幸せな人生なんですよ。

──言われてみれば、たしかに。

バク:それがね、毎日100点満点を求めるからしんどくなるんです。プレゼンした企画は全員が大絶賛、先輩みんなが感動して大号泣、「きみの企画は最高だよ! わっしょい、パーティーだ!」と毎回毎回大騒ぎされていたら、それこそ身が持たないと思いません?

──おっしゃるとおりですね(笑)。

バク:だから、まず「そこそこ幸せ」な日が続いていることも、結構な贅沢だと認識する。「最高に幸せだ」と感受する。そういう心がけを続けるだけでも、ずっと生きやすくなると思います。