「自分らしい生き方ができていない」「あるがままの自分で生きられるようになりたい」と悩む人は多いですが、『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』の著者・精神科医のバク先生は、「自分らしさ」を求めすぎると余計に生きづらくなると語ります。今回は本書の発売を記念し、ありのままで生きようという風潮の落とし穴について聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、イラスト/ナカニシヒカル、撮影/石郷友仁)
「自分らしさ」のゴリ押しは、「自分のラクな生き方」ではない
──「生きづらさ」を感じる原因として、「自分らしい生き方ができていない」というものもあるんじゃないかと思います。ありのままの自分で、肩の力を抜いて生きるにはどうしたらいいでしょうか。
バク先生(以下、バク):うーん、「自分らしく生きる」は、ここ数年「理想の生き方」の必須キーワードのようになっていますよね。患者さんのなかにも「私は自分らしく生きることができていない。だから生きづらいんです」と言われる方もとても多いです。
──そうだろうな、と思います。周りの人を見ていても、自分らしい生き方がしたいという人はかなり多いですね。
バク:まず最初に確認しておきたいのですが、「自分らしく」「あるがままに」生きられれば、生きづらさもなくなり、今よりも幸せになれるだろうと思うからこそ、そういう理想を追い求めるわけですよね。
──はい。
バク:でしたら、断言します。「自分らしさ」のゴリ押しは、「自分のラクな生き方」ではありません。
──ええ! そうなんですか?
バク:私自身も昔は「自分らしさ」にこだわっていました。私はADHDという発達障害を持っていて、人の顔が見分けられなかったり、モノをすぐに無くしてしまったり、遅刻癖があったりと、集団生活に馴染めない時期が続いていて。仕事でもキャパオーバーになり、うつ病になって休職もしました。
そういった経験をして試行錯誤し、生きやすくなってきた今だからこそわかるのですが、私の「生きづらさ」は「自分の変わった特徴を説明して周囲に理解してもらう」ことにこだわっていたからこそ生まれていたんです。