生きづらさの言い訳として発達障害を名乗る「ファッション発達障害」が増えている。そう語るのは、『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』の著者・バク先生です。のべ2万人以上を診察してきた精神科医であり、ADHDの当事者でもあるバク先生は、日常生活の工夫次第で、「発達障害」の生きづらさもラクになると言います。今回は本書の発売を記念し、発達障害とはそもそも何なのか、発達障害で悩む人はどうやって社会に適応すればいいのか、バク先生に質問をぶつけてみました。(取材・構成/川代紗生、イラスト/ナカニシヒカル、撮影/石郷友仁)
発達障害は甘えではなく脳の特性
──最近は、発達障害で悩んでいる人が増えたような印象があります。
バク先生(以下、バク):私の患者さんにも、発達障害で悩んでいる人は多いですね。私自身もADHD(注意欠如多動性障害)でケアレスミスが多かったり、スケジュール管理が苦手だったりと多くの人に迷惑をかけまくり、生きづらさを感じてきました。集団生活になじめずダメ人間な自分に落ち込み、抑うつ状態になって休職したこともありましたが、現在は薬を服用し、仕事に支障を来さない方法を考えられるようになりました。
──ただ、「発達障害は甘えでしょ」という声も耳にしますよね。認知度が上がったわりには、正しい理解が広がっていないのでしょうか……?
バク:「甘えるな」とか「根性でなんとかなる」とか言われる人はとても多いんですが、発達障害は脳の特性なんです。
たとえばADHDは、ドーパミンという脳内の神経伝達物質になんらかの問題が起きている可能性が高い、と最近の研究結果で言われていて。
──脳内の問題とは、どういうことでしょうか?
バク:脳の中でも「空気を読む力」や「社会性」を司ると言われている場所、例えば前頭前野などでの機能異常がある可能性があるんです。それが感情や欲求が抑えにくい原因になっていることが推察されているんですね。
そうなると、思いついたことを瞬間的にやってしまったり、やってはいけないことを衝動的にやってしまったりします。
──具体的には、どんな問題が起きてしまうのでしょう?
バク:たとえば、普通の人はハゲを見たときに「ハゲだ!」って言わないですよね。取引先の会社の社長さんがハゲだったとしても「うわ、ハゲだ!」って言わないじゃないですか。
──言わないですね(笑)。
バク:思っても言わないですよね。でも、発達障害の人はハゲを見たら「あっ、ハゲだ!」って言っちゃうんですよ。