言いたいことを人に言わせる同僚

 自分が責任を問われないように、言いたいことを人に言わせようとする人物もいる。そのような同僚がいて、しょっちゅうイライラさせられるという人がいる。

 会議の前に、「今度の会議にこんな案件が提出されるけど、こんなのが通ったら現場は大混乱ですよ。経営陣は現場を知らないからこんなことを考えるんでしょうけど。現場の実情を説明して、何としても阻止しないと」
などと息巻いており、いかに大変なことになるかをアピールする。それは大変だと思い、会議で現場の実情を具体的に説明しながら反対意見を述べ、その同僚が追随するのを待つのだが、一向に発言する気配がない。ずっと下を向いたまま黙っている。

 結局、その議案は難なく通過し、反対意見を述べた自分だけが上からにらまれることになったとこぼす。

 そのようなことがあったため、つぎにまたその同僚が騒ぎ立てた際に、

「自分で言ってくださいよ」

 と言うと、

「私は口下手で説得力がないから無理ですよ。あなたの発言は説得力があるから、ぜひ口火を切ってくださいよ」

 と言うので、仕方なく会議の場で議案に対する疑問点を指摘して、その同僚の応援を待ったのだが、またしても下を向いて黙っている。疑問点の指摘に対して賛同する声が多く出て優勢になったら発言し、そうでなければ黙っているつもりなのだと分かった。

 しかも、会議室を出るときに、

「まさか、あんな議案が通っちゃうなんて思いませんでしたね。大変なことになりましたね」

 などと平気で言う。

「『あんたも反対しなかったじゃないか。いい加減にしろ!』と言いたい気持ちを必死に抑えた。しかしなぜ平気であんな卑怯なことができるのか、訳が分からない」と首をひねる。