本人のためを思ってアドバイスしたのに、ムッとされて、戸惑うことがある。別にキツい言い方をしたわけではない。慣れていないせいか仕事の手順がちょっとまずかったので、親切心から能率の良いやり方を教えたのだ。これでは、うっかり注意などしたらパワハラなどと言われかねない。このような人物の心の中はいったいどうなっているのだろうか。また、このような人物にどう接したらよいのだろうか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
身近な誰かが褒められると不機嫌になる
こういうタイプの人物に典型的にみられる特徴は、周囲の誰かが成果を出したり、褒められたりしたときに見せる不機嫌な反応だ。
同僚が最速でノルマを達成し、「よかったな」「すごいじゃないか」などとみんなが祝福の声をかけているのに、ひとり不機嫌なオーラを漂わせ、嫌な顔をして黙り込む。自分がまだノルマを達成できていないのに、仲間が早々にノルマを達成すれば、妬ましい気持ちになるものだ。しかし普通は、そうした醜い気持ちは抑えて、祝福の言葉をかけるものだろう。だが、このタイプの人物は、妬ましい気持ちを抑えることができず、露骨に嫌な顔をしたり、ときに嫌みを言ったりする。
同僚が上司に呼ばれ、
「取引先の○○さんが褒めてたよ。なかなか気の利く人物だって」
「その調子でうまく売り込んでくれ」
などと言われているのが聞こえると、自分が叱られたわけでも、低い評価を受けたわけでもないのに、突然不機嫌モードになり、ふさぎ込む。
同僚が大きな案件を受注し、みんなから祝福の言葉をかけられているそばで、「なんだよ、たいした額じゃないのに大騒ぎして」などといった嫌みを独り言のように口走る。
身近な誰かが成果を出したり褒められたりすると不機嫌になり、嫌みを言ったりする――そこに感じられるのは、強烈な対抗心だ。