高年齢化が進み、もはや誰もが他人事ではなくなった「認知症」。家族が認知症になった場合、イライラしたり悲しくなったりして、つい相手に否定的な言葉をかけてしまっていないでしょうか。実は、そういった話しかけ方や負の言葉が認知症をさらに悪化させ、介護を難しくさせてしまうのです。そこで今回は、日本老年精神医学会専門医の吉田勝明さんの著書『認知症が進まない話し方があった』(青春出版社)から、認知症の悪化を防ぐ「話し方」のポイントについて抜粋紹介します。
認知症を進行させてしまう「思いやり」
まず、認知症を悪化させないためには、「よかれと思ってやっている行動」を見直すことが重要です。よくあるのが、「認知症の人が本当はできること」まで介護者がやってしまうこと。
認知症の方は認知機能の低下によって、料理や買い物、掃除などの家事や身支度など、これまで普通にやってきたことが、スムーズにできなくなります。その様子を見て、「きっとできないだろうから」「なんだか大変そうに見えたから」と、なんでも周りの人が代わりにやってしまうことが多いのですが、これを続けると認知症の進行は早くなります。
家事・身支度などは大したことではないように思えるかもしれませんが、やる機会が減れば、考えたり体を動かしたりするチャンスもそれだけ減ります。これが、脳や体の衰えにつながり、症状の進行を早くするのです。