世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

SDGs社会を生き抜く「最も大切な視点」とは?Photo: Adobe Stock

もはや環境を無視して、経済発展などできない

 本日は「環境」視点で経済を考えます。昨今、「限りある資源は現在の世代だけのものではなく、将来世代のものでもある」という考え方、「sustainable development」が生まれました。

 これは「持続可能な開発(発展)」と呼ばれ、環境と開発の共存が叫ばれるようになりました。

 特に1992年の「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」ではこの考えを元に「リオ宣言」や「アジェンダ21」として具体化され、その後の地球環境問題に対する取り組みに影響を与えています。

 日本は自然環境が豊かな国であることもあり、今後の経済成長と環境保全の両立をはかるために「経済のグリーン化」の考えが必要不可欠であると考えられています。

 例えば、地球温暖化、それに起因した生態系の変化などは、経済活動によってもたらされたものです。より多くの人が環境意識を高め、環境への影響を理解し、環境に良いと判断した経済活動を進めていくことが必要であると考えられています。

 SDGs(Sustainable Development Goals)は、「持続可能な開発目標」という日本語訳が当てられます。2015年9月の国連サミットで採択されました。「地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことが理念として掲げられ、2016~2030年の15年間で、世界各国が達成すべき17の目標、169のターゲットが示されました。

 また経済・投資活動には、「環境(Environment)」「社会(Social)」「管理体制(Governance)」を反映させようという考えが広まりました。これは「ESG課題」と呼ばれ、「脱炭素社会の構築を目指す」ことなどが好例です。

 さらに2015年の地球温暖化防止パリ会議には、気候変動枠組み条約加盟国(196ヵ国)が参加し、翌年にパリ協定が発効されました。発展途上国には排出規制がなかった京都議定書と違って、より地球規模での気候変動への取り組みが強化されました。

 地球上、すべての国や地域で「地の利」が同じということはありません。それぞれの国や地域に存在する「地の利」を活かし、経済活動や生活様式が構築されています。

 しかし、欧米諸国が定めたローカルルールが、さもグローバルルールであるかのように喧伝され、日本政府や日本企業が振り回されることが多くなりました。日本には日本の地の利があり、それに最適化した経済活動を追求する姿勢もまた、忘れてはならないのかもしれません。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)