「部活の主体を学校から地域へ移行することは必須です。学校単位で活動すると、生徒も教員も参加せざるを得なくなります。まずは、学校の活動と部活は切り離すことで教員の負担を減らし、複数の学区で自由参加方式の地域部活とすることで生徒の負担も減らす。地域部活での兼業許可制度も文部省は作ろうとしていますから、部活指導したい教員には一市民として指導してもらう。また地域部活では練習は週に何日と決めて、過熱しない制度設計も必要です」

 国主導で部活改革が行われてはいるものの、中には部活動の延長にすぎない地域部活も発生している。

 例えば、夕方まで学校主体の練習があり、夜に地域主体でまた練習するという形だ。地域部活を隠れみのに長時間化しているのである。このような事態を防ぐためにも抜本的な部活改革が求められる。

 内田氏はこのような部活改革によって過熱を抑え、高校で「燃え尽きる」生徒を減らすべきだとも語る。

「部活顧問は『今でも部活の教え子と交流があり、卒業後、飲みに行くほど固い絆で結ばれている』という美談をよく話します。それによって部活は良いものだから全生徒にさせるべきだと思い込むのです。しかし、その美談の裏には苦しくて辞めた生徒や好きだった競技を嫌いになった生徒も大勢いる。そういう生徒は『燃え尽きた。嫌いになった』と言って大学でスポーツをやらないのです。これは、好きでやっていたはずのスポーツや芸術活動を高校でやめさせるという現代の部活の弊害であり、子どもの成長を止める営みです。大学でそのような学生を見ると、私はとても悔しい。部活改革によって、好きなことを一生涯続けていくことができるように大人が道筋をつけていくべきです」

 肥大化、複雑化する部活動について提言を行ってきた内田氏だが、「改革まであと一歩」という。

「2015年から問題提起をしてきましたが、地域移行の取り組みなど、よくここまで変わったなと感じます。教員の半分が顧問をやりたくないのに部活が過熱している仕組みは異常であり、彼らの声が黙殺されていたということです。ただ、問題意識を持っている教員はたくさんいるので、改革までは本当にあと一押しかなと思います」

 かく言う筆者も、さまざまな理由により「燃え尽きた」元高校球児である。人ごとではない部活改革の最後の一押しが、『部活動の社会学』となることを期待したい。