グローバルの小さい仲間と「参画型のコミュニティー」に所属する

尾原 前回の対談でもおっしゃったように、テクノロジーによって誰もがサービスを立ち上げられるようになるという「イネーブラー」の時代の中で、規模化を追わずに「持続的に誰かを幸せにし続ける」という選択肢が増えていますよね。

 特に、ライブ配信の流れは「非言語」ですよね。今までは、日本の中だけを対象にしていたから、小さ過ぎて持続的にするのは難しかったと思います。けれども、世界100カ国において1カ国当たり100人のユーザーが集まれば、それで1万人になりますよね。つまり、小さいものを重ねることで、持続的にするやり方も出ていますよね。

高宮 先ほどの僕の話は、少し抽象的になってしまったので具体的に言いますね。例えば、「アル」がやっている『00:00 Studio(フォーゼロスタジオ)』で、漆塗り職人が、漆を何重にも塗って1つのおわんを作るのに、何カ月もかけているところを配信するとします。

 それを見た海外のアートマニアが「かっこいい!」といって、投げ銭を送ったりできます。また、漆塗りの完成品のデジタルデータを、「アル」がやっている「elu」というサービスで数量限定で売り出して、海外の人が買ったりできるわけです。このようなことが、成り立つ時代になってきたなという感じだと思います。

尾原 「パッション」や「プロセス」に練り込まれた「想い・努力・試行錯誤」が、プラットフォームの上に集まって、小さい仲間として「所属的なもの」が生まれてきていますね。

高宮 漆塗りの職人さんとか無名の若いアーティストなどを応援したいと思う話は、先ほどのライブ配信している中で、チャットすることでコミュニケーションが生じるから、アタッチメント(愛着)が生まれて、ファンになることと同じだと思うんですよね。

 だから「ライブ・リアルタイム」という部分は、ファンを作る上で大事ですね。また、制作過程をライブ配信するという部分は、「参加・参画」をする上で大事ですよね。

尾原 この時にしか得られないものという感覚が、愛着を生んだりしますよね。そして、漆塗り職人さんが毎朝この時間に必ず起きて、朝一番の空気の中でやっているという文脈に、価値を生んだりしますよね。

 これらは、昔でいうと「茶道」がまさにそういうものだったんです。「一期一会」という言い方をしますけど、その時の季節、その時のイベント、その時の相手がどういう人生を送ろうとしているかを、たった1つの「茶事(お茶のイベント)」に練り込んで作っていくということです。むしろそこに、「プレミアム」が生まれるということですね。