かつては権威やキャリアと引き換えに医者を薄給でこき使ってきた大学医局だが、近年愛想を尽かす若手が続出し、残った医者のブラック労働化が深刻化している。そこに2024年から医者の労働時間の上限が設けられることになり、守れない病院にはペナルティーが課される。特集『医学部&医者2021 入試・カネ・最新序列』(全21回)の#13では、医者不足の地方の大学医学部で、働き方改革に挑む旭川医科大学の紙谷寛之教授がその苦労を語る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
令和になっても「無給医」がいるブラック職場
大学病院に働き方改革を迫る「2024年問題」
教授を先頭に医者や看護師が病院内を練り歩く教授回診。テレビドラマ「白い巨塔」の有名シーンだが、往時ほどでないにしろ、今も大学病院の人事システムは、教授を頂点とした完全なるヒエラルキー型を敷いている。
そんな前時代的な大学病院は、令和の時代になっても、「無給医」(医学博士号の取得と引き換えに大学院生の医者に無給で診療させる)の存在が取り沙汰される、日本有数の“ブラック職場”だ。しかし、とうとう法の下に「働き方改革」の鉄ついが下される。2024年4月から、労働基準法で勤務医の時間外労働に制限が設けられることになったからだ。
次ページでは大学病院とそれ以外の一般病院の年収のデータを比較することで、大学病院勤務医の疲弊を改めて解説。さらに、ヒエラルキーの頂点に立つ教授の苦悩を取材。「偏差値55」の医者を育てる真意とは。
改革を進めれば、医者の手術の経験数が減るというデメリットも指摘される。大学病院は、働き方改革で変われるのだろうか。