私立大学の医学部は他の学部に比べて、かなり高い授業料を得ている。しかし、だからといって医学部のある大学の財務に余裕があるわけではない。特集『医学部&医者2021 入試・カネ・最新序列』(全21回)の#19では、コロナ禍が直撃した2020年度決算を含む過去5年分の決算から、収益性、健全性など多角的に分析。31校の収入や借金の負担はどれほど違うのか。資産の運用がうまい大学は?あるいは、人件費や教育研究経費、OBからの寄付が多いのは?徹底比較しながらその姿を解説する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
決算分析で浮かび上がった
コロナ禍直撃の意外な財務状況
2021年度より、東京女子医科大学は授業料など6年間で必要な学費を約1200万円値上げした。総額で4709万2000円となり、3割強の大幅値上げである。
私立大学は、国公立大学のように国からの運営交付金を受け取ることはない。私学助成金はあるものの、運営交付金の手厚さには到底及ばない。だから、経営が行き詰まった場合には、自力で収支を均衡させるしかない。授業料値上げもその一つの手段である。
私大の医学部というと、授業料が高いというイメージだし、実際に高い。では、さぞや収支は楽なのだろうと思えるが決してそうではない。
今回、医学部のある私立大学全31校の財務諸表を分析し、九つの経営指標ごとにランキングを作成し、収益性、健全性など多角的に分析してみた。対象期間は、16年度から20年度までの5年間である。
20年度は、言うまでもなく新型コロナウイルス感染拡大で、各大学が抱える地域の拠点病院は新型コロナウイルス感染症の患者の治療に忙殺されたのだが、決算分析で浮かび上がったのは意外な姿だった。
31校の収入や借金の負担はどれほど違うのか。資産の運用がうまい大学は?あるいは、人件費や教育研究経費、OBからの寄付が多いのは?次ページ以降、短期と中期の経営指標を徹底比較しながらその姿を解説する。