せっかく過酷な医学部受験を経て医者になったのに、早々に経済的自立、早期リタイア、“FIRE”を夢見る若手が増えているという。IT企業を起業したり、海外に飛び出す者も増えている。その背景にあるのは今後の医療産業に対する不安、日本のいびつな医療システムへの諦めだった。特集『医学部&医者2021 入試・カネ・最新序列』(全21回)の最終回では、一匹狼のフリーランス女医が医療界の矛盾に切り込む渾身のエッセーの後半部分(前半は本特集#5)をお届けする。
若手医師にまん延するFIRE志向
縮小する医療産業に危機感
コロナ禍で改めて浮き彫りとなった「医療界における報酬体系の歪み」は、「日本では、頑張る医師は報われない」と達観する若手医師を増やし、かねての女医率上昇もあって「ワークライフバランス重視」「“頑張らない”化」がさらに進行しているように感じる。
近年、若手医師の間では「命に関わらない、ローリスクで拘束時間が短く、自分の人生の質が高い」科として、俗に“マイナー科”と呼ばれる眼科・耳鼻科・皮膚科・精神科が人気を博しているが、さらにコロナ禍の頃より、FIRE(経済的自立、早期リタイア)志向の若手も見掛けるようになった。