上場企業は民主政治
ユニコーンは哲人政治
起業後10年以内で時価総額10億米ドル以上に達した企業をユニコーンと呼ぶ。CBインサイツによれば、2021年7月時点での世界のユニコーン数は750社と前年比1.5倍となった。国別でみると、米国378社、中国155社であり、米中で全体の71%を占めている。
日本のユニコーンは6社と低水準だ。日本でも官民挙げてユニコーンが産まれるエコシステムを作るべきだという掛け声が強い。しかし、一度立ち止まり、ユニコーンなるものが、経済社会に何をもたらすのかを改めて考えてみたい。
一般的に上場企業の時価総額は、多数の買い手と売り手の期待が交錯することで決定される。非上場企業であるユニコーンの時価総額は、ベンチャーキャピタルなど限られた機関投資家が「まあ、これぐらいの水準でしょうね」と仮定して付与する価値だ。
一口に時価総額と言っても、上場企業とユニコーンでは異なる。上場企業の時価総額は、大数の法則で成立する。ユニコーンの時価総額は、有望ベンチャー企業への投資を許された少数の機関投資家の思惑次第だ。誰もがユニコーンに投資できるわけではない。
政治システムで言えば、前者は大衆含めた全員参加型の民主政治であり、後者はプラトンの描く優秀なエリートによる哲人政治だ。民主政治は衆愚政治に陥るリスクがあり、哲人政治は専制・独裁政治に変性するリスクがある。