自らの時計をつくれPhoto:Colin Anderson Productions pty ltd/gettyimages

 本連載は今回で100回目を迎える。連載が始まったのは、4年前の2017年。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の寡占が既に確立していたが、その後も多くのスタートアップ企業が大きく羽ばたいた。例えば、つい最近大型上場を果たし、時価総額が約3.5兆円を超えた投資プラットフォーム企業、ロビンフッド・マーケッツの創業は13年だが、4年前にはユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを果たしていた。

「シリコンバレーの流儀」の目的は、実は、このような興隆するスタートアップ企業を紹介したり、市場トレンドやGAFAの動きなどの情報を提供したりすることではない。

「調査会社では、その都度情報を求めてくるクライアントが上得意先だ」。これは私が経営コンサルタントだった頃に先輩から教えられたことだ。答えが欲しくなったら調査プロジェクトが繰り返し依頼されるからだ。これと同じでここ数年、すぐに答えが得られるような、“テクノロジー解説本”がよく売れているようだ。

 一方、経営コンサルティングでは「時刻を教えるのではなく、時計の読み方を教えることが重要だ」といわれる。時刻とはすなわち「答え」だ。コンサルティングを通して時計を読む能力が組織に備われば、未来を予測することができると考えられているからだ。

 日本企業は、他人に時刻を聞く姿勢が強いように思う。私はこれこそがここ20年間、日本が産業転換や新産業の創造をできずに停滞している根本原因だと考えている。

 パソコンの父といわれる研究者、アラン・ケイは、「未来を予測する最も良い方法は、創造してしまうことだ」と言ったが、日本企業にはこの発想が欠けている。