本当は難しくない「PBR」「PSR」「EV/EBITDA」の活用法Photo: Adobe Stock

 プロアマ投資家問わず、株式投資の現場で最も頻繁に使われる株価評価(バリュエーション)としてPERやPBRがあります。拙著『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』では、バリュエーション方法の一部として、PERやPBRの使い方を、企業の収益性を示すROEと関連づけながら見ていきました。厳密に理論株価を出したあとでも、最後は「結局、その理論株価はPERでいくらなの?」なんていうやりとりがプロの間でも普通にされます。

 ただ、PERやPBR以外にもバリュエーションは存在します。機関投資家と呼ばれるプロ投資家は、株式市場の状況や投資対象の銘柄、またその銘柄の事業内容によってバリュエーションを使い分けているのが実際です。

 株式投資を始めたばかりではバリュエーションの使い方がよくわからないという方も多いかと思います。このコラムでは各バリュエーションについて、それぞれどのようなシーンで使うのかを中心に解説をしていきます。

本当のPBRの使い方

 PBRについて見ていきましょう。

 PBRはPERに次いでよく使われるバリュエーションではないでしょうか。これもPERと同様に算出が簡単です。

 PBR=株価÷1株当たり純資産 ……(A)

 純資産は、主に株主資本で構成されていて、過去の利益の蓄積です。利益をフローと呼ぶのに対して、純資産などはストックとも呼ばれます。

 たとえば、PBRで1倍を割れている、つまり株価が1株当たり純資産を下回っている場合には、割安だという評価がされます。PBRが1倍以下で投資ができれば、仮に企業が解散してもリターンがあるでしょうという考え方です。

 ただし、現実的には金融機関などから借り入れしている場合には、そんなに簡単に清算できません。また、清算するとなった段階で、現在の財務諸表に計上されている資産価格で資産を売却できる保証もありません。したがって、割安なPBRの銘柄に投資をするバリュー投資も、基本的には解散目当てではなく、ゴーイングコンサーン(継続企業)が前提で、何らかのきっかけで株式市場でのPBRの評価が大きく上昇するのを狙う投資ということになります。