PBRの使い方としてプロ投資家でよく使われるのは、利益水準が大きく変動する企業の評価です。前回見たPERは、利益水準が大きく変わると使いにくいバリュエーションとなってしまいます。

 たとえば、景気が悪化した際に、企業は一時的に利益水準が大きく低下するとしましょう。そうなると、PERが普通の景気のときと比べて極めて大きくなってしまいます。また、当期純損失、つまり赤字の場合にはPERを測れなくなります。

 本当はそうした場合には、将来の景気回復に向けて、積極的に「買う」機会であるのですが、PERが高いということで、バリュエーションが高いと判断してしまうことがあります。これでは、PERは使えるバリュエーションとは言えません。

 したがって、景気に敏感な産業や企業を見る際には、単年度で極端に大きく変動するフローの利益ではなく、ストックである純資産をベースにしたPBRを過去から見ていくことで、固有銘柄において株価がどの水準にあるのかを分析します。こうすることで、景気がよくない状況でもその銘柄の投資判断に使うことが可能となります。

 また、各銘柄のPBRとインデックス(日本株であればTOPIX)のPBRと比較した相対PBRを参照して、その銘柄が日本株全体に対して割安なのか割高なのかを見るというアプローチもあります。

 PBRには、1倍を割るか割らないかといった絶対値を見る基本的な使い方もありますが、本当に使いやすいのは、過去(歴史)や全体と比較して使用する方法です。

PBRで1倍を超えると
株価は高いのか?

 PBRを単独で使用として困るのは、1倍を超えたときです。1倍を超える銘柄はいくつもありますが、1倍を超えた銘柄について、2倍が高いのか、3倍が高いのかといった判断は、これだけでは基準もなく難しいように見えます。

 そこでPBRは、(A)の式、「PER=株価÷1株当たり当期純利益」の式、「ROE=1株当たり当期純利益÷1株当たり株主資本」の式を使うと、以下のように分解することでき、理解しやすくなります。

 PBR =株価÷1株当たり純資産
   =(株価÷1株当たり当期純利益)×(1株当たり当期純利益÷1株当たり株主資本)
   =PER×ROE ……(B)

(※ここでは純資産を株主資本と同じものとして話を進めます)

 このようにして見ると、PBRは「利益成長のポテンシャルを示すPER」と「株主資本に対するリターンを示す指標であるROE」を組み合わせたものであることがわかります。つまり、PBRにもPERを通じて利益の要素が入っていることになります。

 詳しくは拙著『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』を参考にしてほしいのですが、PBRが1倍を超えた場合でも、その背景がPERからくるものなのか、ROEからくるものなのを理解することができます。