飲み会は重要なものだけ出るのもアリ

 昔は、飲み会に参加しないことをよしとしない会社もありました。

 しかし、いまはどうでしょう。若い方が飲み会に参加したがらないので、飲み会自体もだいぶ減ってきたと聞きます。

 そんななか、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、以前のように飲み会が大人数で開催される機会が少なくなりました。忘年会や歓送迎会をやらなくなった会社も、多いのではないかと思います。

 しかし、忘年会や歓送迎会をしなかったことで、仕事がうまくいかなくなったかというと、どうでしょうか。「飲み会をしなくても仕事はできる」ということを、多くの人が感じたのではないかと思います。

 飲み会に参加すると疲れてしまう人は、ひとつひとつの飲み会について「この飲み会に出なかったら、仕事で不利になるのか」を考えてみてください。そして、自分にとって必要最低限の飲み会を選んで、無理のない範囲で参加するようにしましょう。

 飲み会が苦手な場合に「必ず参加する」のは大変ですが、反対に「すべて断る」というのも簡単ではありません。ですから「飲み会は重要なものだけ出ればいい」と考えるのです。

 たとえば、自分の歓送迎会のように重要な場には参加し、日常的な飲み会は辞退するというのも、ひとつの考え方です。そうすることでラクになる人もいます。

 日常的な飲み会について、自分が幹事をするときには参加し、気が乗らなければ欠席するという方法もあります。

 飲み会で話し相手を見つけて、話題を探して、お酌をして……、と考えると、いろいろと気疲れしますが、幹事であれば、注文をとったり会計をしたりして、事務的な会話に集中できるので、ストレスも減るかもしれません。

「お酒が得意ではない」

 重要な飲み会にだけ参加したいと思っても、誘いをうまく断れない人もいるのではないでしょうか。

 その場合には、「お酒が得意ではない」などの正当な理由を伝えて断ることをおすすめします。

 私もお酒が苦手で飲み会がストレスになることもあり、長年悩んでいたのですが、あるとき異動したことをきっかけに、周りの人に「ほとんど飲めない」ということを素直に伝えました。

 それ以来、無理に飲み会に参加することが減って、とてもラクになりました。飲み会に出席しても、ノンアルコール飲料しか飲まないことにしています。

 このように、転職や異動などをきっかけに「お酒が得意ではない」ことを伝えるのも、ひとつの方法かもしれません。

 ただ、その場合には、「飲めないから飲み会を断る」という流儀を貫き通すことがポイントになります。

「飲めないけど、相手によっては無理をして飲む」といった形で曖昧な対応をしていると、結局、「付き合いがいい・悪い」という話になってしまいます。

「自分はこういう理由でこれをしない」と決めたら、それをルールとして、淡々と実践していきましょう。そうすれば、周りからの理解を得やすくなります。

(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)

本田秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より、同子どものこころの発達医学教室教授。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。2019年、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演し、話題に。著書に『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『最新図解 女性の発達障害サポートブック』(ナツメ社)などがある。