定年後の起業には
それなりの「覚悟・準備」が必要
筆者は現在69歳だが、60歳で定年を迎えるまではひとつの会社で働き続けた。いわば、古き昭和の終身雇用である。若い人からすると今や絶滅危惧種に近いと思われるかもしれないが、今となっては功罪相半ばしており、良いことも悪いことも両方あったというのが実感だ。ずっとひとつの会社に居続けたわけだから、リスクを取らない性格と思われるかもしれないが、定年後はそれまでと一転して起業したわけなので、それほどリスクを取ることが嫌いという性格でもないと自認している。
筆者は常々、定年後に再雇用で働くことはあまり積極的に賛成していない。サラリーマンであれば最悪の場合でも公的年金で生活できるのだから、多少はリスクを取って自分の好きなことをやるために独立した方が楽しいと考えているからだ。自身の体験に照らし合わせてみても、サラリーマン時代はあれほど仕事が憂うつだったのが、独立起業した途端にそれまでとは180度仕事観が変わり、毎日の仕事が楽しくて仕方ないという状態になったから面白い。人間にとって自己決定権の大きさが、モチベーションにいかに大きな影響を与えるかということを身をもって体験した。
もちろん起業については筆者自身必ずしも順風満帆で来たわけではなく、いろいろ苦労することも多かったが、自分で選んだことではあるし、何よりも好きなことを仕事にしているので、サラリーマン時代のようなストレスはあまりなかった。ただ、そうはいっても起業してそれなりに軌道に乗せるまでにはやるべきことや気をつけるべきことはたくさんある。筆者自身も定年起業に関する本は何冊か書いたが、やはりそれなりの覚悟と準備が必要だ。