アサヒ・キリン・サッポロ、コロナ禍で明暗を分けた三者三様の「稼ぎ方」Photo:PIXTA

新型コロナウイルス感染拡大により会食や宴会の需要が縮小したことで大きな打撃を受けているのが、ビールメーカーだ。ただ、日本の大手ビールメーカー3社の決算書を比較すると、この苦境においても各社の戦略は大きく異なっている。それぞれ何を「強み」として収益を維持、拡大していこうとしているのだろうか。各社の決算書から読み解いてみよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

アサヒGHDのB/Sが
大きく膨らんでいる理由とは?

 今回は、アサヒグループホールディングス(アサヒGHD)、キリンホールディングス(キリンHD)、サッポロホールディングス(サッポロHD)のビール業界3社の決算書を比較してみよう。

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、居酒屋など外食におけるビール消費量が大きく減少し、苦戦が伝えられるビール業界だが、実はこれら3社の戦略は大きく異なる。そうした戦略の違いが決算書にどのように反映されているのかに着目しながら、比較していくことにしよう。

 まずは、アサヒGHDの決算書から見ていこう。

 アサヒGHDの貸借対照表(B/S)の資産サイド(左側)において最も特徴的なのは、約2兆7020億円もの無形固定資産が計上されている点だ。この無形固定資産は、総資産の約6割に相当する。

 B/Sと損益計算書(P/L)の相対的な規模を比較してみると、後ほど取り上げるキリンHDやサッポロHDではB/SがP/Lの1.3~1.4倍程度に収まっているのに対し、アサヒGHDではB/SがP/Lの2倍を上回っている。これも、アサヒGHDの資産に多額の無形固定資産が計上されているためだ。

 なぜアサヒGHDでは無形固定資産の額が大きくなっているのだろうか。