岸田文雄氏自民党総裁室の椅子に座る岸田文雄新総裁 Photo:JIJI

岸田文雄氏が自民党の新総裁に選ばれた。政府・日本銀行による今後の財政・金融政策はどうなるのか?岸田氏の発言や現状分析に基づき、次期岸田政権の金融政策に対するスタンスを予想する。ポイントは大きく三つだ。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

岸田新総裁の金融・財政政策への言及は
首相の座が近付くにつれ変容

 9月29日に日本銀行の黒田東彦総裁の在職日数が過去最長となり、同日には岸田文雄衆議院議員が自民党の新総裁に選ばれた。新政権および日銀の政策は今後どうなっていくのか占ってみよう。

 岸田氏は金融・財政政策に関して以前は次のように発言していた。「(金融緩和策の)出口のタイミングを考えることが大事だ」「財政再建がなければ将来の消費もないし、政策の足かせになる」(2018年3月)。

 20年10月出版の著書『岸田ビジョン』では、日銀のバズーカ緩和策の効果の限界、副作用を指摘していた。「これ以上さらにマイナス(金利の)幅を深くできる余地も現実的にはありません。それをやると地方銀行がもう持ちません」。

 また財政については、「大規模災害はこれで終わりのはずはありません」「国として『財政』という財布に一定の余裕を持つことが何としても大切です。そのために財政の健全化を志向することが重要だと私は考えています」と述べられていた。

 しかし首相の座が近付いてくると、党内事情や今後の選挙等々を意識した言い方へと変化していく。今年9月に岸田氏は、「今は国の危機。借金してでも病気を治さなければならない」「(財政出動や金融緩和は)しっかり進める、続ける」と発言。

 また政策提言のペーパーである「新しい日本型資本主義」では、冒頭で「『デフレ脱却」に向け、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3本柱を堅持」すると、アベノミクス継承を明確に表した。その上で、格差拡大につながった新自由主義を否定。イノベーションを促進しつつも所得再配分を進め、中間層を復活させて「令和版所得倍増」を目指すという。現時点では数十兆円の補正予算を組む方向性が示唆されている。

 こういった材料から総合的に考えると、次期岸田政権の金融政策に対するスタンスは次のようなものになるだろう。