ハイアットとヒルトンは大赤字でマリオットは黒字、「コロナ耐性格差」の正体

 米ビジネススクールの講師である著者が、グローバル人材のための「決算書の読み方」を伝授する本連載。基礎編で学んだ決算書の知識をベースに企業のビジネスモデルを検証していきます。

 前回は、Marriott International(米マリオット・インターナショナル、以下マリオット)について分析してきましたが、今回は同社も含めた外資系ホテル3社のビジネスモデルの違いに触れていこうと思います。

 前回の記事では、「旅行関連業界」に属するマリオットとデルタ航空を比較して、マリオットが不況に強く、旅行者激減の中でもうまく経営をコントロールする企業であることを分析しました。詳細は『マリオットがコロナ禍でも大赤字にならなかった「ホテル経営の秘密」』 に譲りますが、その秘密はマリオットが「資産を持たない経営」、すなわちフランチャイズ経営だということが大きく関係していました。

 では、マリオットのような外資系ラグジュアリーホテルはどこも同じような経営をしているのでしょうか?今回は、マリオットと他の外資系ホテルの財務諸表を比較して、現在のホテル業界について分析していこうと思います。

マリオット、ヒルトン、ハイアットの比較でわかる
ラグジュアリーホテル経営の「トレンド」とは?

 本日はマリオットの他に、Hilton Worldwide Holdings(米ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、以下ヒルトン)やHyatt Hotels(米ハイアット ホテルズ、以下ハイアット)を加えた3社を比較分析していきます。今回も新型コロナウイルス感染症(COVID19)の影響があった2020年度ではなく、19年度(19年12月期)の決算書を使います。まずは以下の貸借対照表(BS)のイメージを見ていきましょう。

ハイアットとヒルトンは大赤字でマリオットは黒字、「コロナ耐性格差」の正体出典:各社の19年度の10K(年次財務報告書)を基に筆者作成
拡大画像表示

 マリオットやヒルトンの有形固定資産が総資産に占める割合が10%にも満たない一方で、ハイアットは約50%を占めています。またブランドやのれんを足し合わせると、マリオットとヒルトンは対総資産で60%を超えていますが、ハイアットはブランド自体がBS上に存在せず、のれんも5%以下しかありません。

 ここから推察できる3社のビジネスモデルとはどのようなものでしょうか?またその違いによって、コロナ禍が業績に与えたダメージはどれほど違ってきたのでしょうか?次ページ以降で詳しく解説しましょう。