「持続可能な利益」とは
そもそも何なのか

 ここで出てきた「企業価値」とは、どういったものなのでしょう。いろんな考え方があろうかとは思いますが、1つの考え方としては以下のようなものではないでしょうか(図表5)。

企業は「サステナビリティ」とどう向き合うべきか図表5

 将来的な利益を現在価値に割り引いたものの総和が企業価値であるとすれば、足元の利益以上に、5年後、10年後、20年後と続いていく利益がどれほどあるのかが重要になってきます。

 そうすると次に、持続可能な利益とは何かを考えていかないといけない。「持続可能な利益」を言い換えると、それは「社会に認めてもらえる利益」なのではないでしょうか。社会に認められない利益なのであれば、たとえ今は利益が出ていたとしても、将来のどこかの時点で社会から拒絶されて利益が出なくなってしまうことを、企業は心に留めておく必要があります。

 最近は完全にバズワードと化している「サステナビリティ」という言葉を使うとすると、企業がサステナブルに成長していくためには、社会から認めてもらえる利益を追求していくことが一番重要ということかと思います。

 ただ、これは口で言うほど簡単なことではありません。当然のことながら、企業が追求した価値を社会が一朝一夕に認めてくれるわけではありませんので、相当な時間がかかります。そして時間がかかる取り組みなのであれば、リスクが伴います。リスクを取って先行投資をして、時間をかけてその価値を社会に対して訴求し続ける事によって初めて、社会から認められるのだと思います。

 一方で、どうして企業の長期的な取り組みを投資家は理解してくれないんだという声を企業の方からよく聞きます。これはまさに、リアリズムが欠落している1つの事例ではないでしょうか。長期的な取り組みというのは、当然のようにそこにあるものではありません。企業と投資家の日々の真剣勝負の中で信頼を勝ち取り続けた結果として長期な取り組みを信じてもらえるようになる、そういったものではないかと私は思っております。

 企業として戦略をしっかり持ち、投資家とちゃんと対話をしながら信頼を勝ち取り続ける。そして企業価値をどんどん上げていくという取り組みをしていくことが求められるのだと思います。そのヒントになるお話が、この後の中神様の話に詰まっておりますので、私の話はここまでにして、ここからは中神様にバトンパスをしたいと思います。