元民主党のプリンスと
岸田派のムードメーカー

 まずは静岡5区です。

 特に注目すべきは、細野豪志氏(50)と吉川赳氏(39)の因縁の対決です。

 細野氏といえば、かつては「民主党のプリンス」と言われ、容姿端麗で(過去に女性スキャンダルでも騒がれたことがあります)、環境相や幹事長を務めた経験もあります。

 その後、東京都知事の小池百合子氏らと希望の党を立ち上げた際に、古巣の仲間を「排除」などしたため、その後に希望の党が空中分解したら行き場所を失いました。

 すると驚いたことに、あの二階俊博幹事長を頼り、かつて批判しまくっていた自民党に入ろうとするというウルトラCを繰り出したのです。

 結局、自民党の公認を取り付けることができないまま選挙を迎えることとなりましたが、依然、根強い人気があります。

 一方で、吉川氏といえばあまり情報がちまたに出ていません。私は当選同期の彼のことをそれなりに知っているので、ここでその人物像について紹介したいと思います。

 吉川氏は多くの人たちから「岸田派のムードメーカー」と言われています。いつも彼のそばには明るい空気が流れていて、今回の総裁選挙の終盤で岸田氏がお疲れモードになっていたときには彼が呼ばれて「何か岸田会長が明るくなるようなことを言ってくれ」と、周囲から「むちゃぶり」されるような明るい男なのです。

 議員になる前は政治家秘書だったのですが、さらにその前は本格的に落語をやっていたこともあり、なかなか弁が立つのです。

 細野氏と吉川氏は身長差が約20センチあるそうで、吉川氏は選挙演説の際、「私は細野さんに身長では負けているので、選挙ではゲタを履かせてください」と、どこか落語的な話を入れるのです。

「うまいことを言うなあ」と思っていると、今度は雰囲気を変えて政策論(医療・介護分野が専門)を展開するのですが、それが驚くほどわかりやすい。さすがだなと感心させられます。

 話し手として一流であるだけでなく、周囲からの人望もあります。

 過去3回の衆院選では細野氏に敗れましたが、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て迷走し続けている細野氏が勝つか、岸田氏を陰で支えてきたムードメーカーの吉川氏が勝つか、注目したいです。