岸田文雄首相が、衆議院の解散・総選挙を決断した。総選挙の重要な焦点の一つが、「野党共闘」が自民党・公明党の連立与党との対立軸を築けるかだ。日本維新の会を除く野党は、小選挙区289のうち、約220で候補者一本化ができたと発表している。しかし、2009年の政権交代当時と比べると、どうも構想に稚拙さを感じる。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
あきれた「野党共闘」
共産党の筋の悪さとは
今回の「野党共闘」は、共産党が多くの選挙区で候補者を取り下げることで実現した。かつては、全国ほとんどの小選挙区に候補者を立てた共産党が、今回はわずか105人しか擁立していない(NHK「衆議院選挙 立候補予定者一覧 小選挙区―衆院選―」)。
共産党と立憲民主党は、衆院選で政権を獲得した場合「限定的な閣外からの協力」を目指すことで合意した。志位和夫共産党委員長は、「共産党の99年の歴史でこうした合意を得て総選挙をたたかうのは初めてのこと」と自画自賛した。
だが、これは、まったくあきれた話だ。野党共闘は、共産党にとっては、非常に「筋が悪い」戦術だと思う。
議会制民主主義における「政党」とは、政策の方向性が一致する人々が集まり、選挙に多くの候補者を立てて闘い、議会で多数派となることで権力を握り、政策を実現していく組織である。
ところが、共産党は「候補者を出さないことで、権力の座を握る」というのだ。候補者を出さなければ、有権者が選択することができない。それは、議会制民主主義としてあるべき姿ではない。共産党は、政党として存立する資格を失っているのではないだろうか。