38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの会計士・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売に。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えします。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

営業キャッシュフローは嘘をつかないPhoto: Adobe Stock

利益は誤魔化せても、
営業キャッシュフローは増やせない

カノン 先生、D社の何が気になるのでしょうか?

林教授 営業キャッシュフローがマイナスということは、得意先が代金を支払えないのかもしれないね。最悪の事態として、架空の売上を計上しているかもしれない。

カノン 架空売上ってなんですか?

林教授 学校の成績が40点なのに、親に嘘をついて80点だと伝えるようなものだ。

カノン そんな嘘なんか、すぐにバレると思いますけど。

林教授 利益を誤魔化しても営業キャッシュフローは増やせない。誤魔化せないんだよ。なぜなら、キャッシュフローは嘘をつかないからね。

カノン 先生、アクルーアルがマイナスのA社やC社についても説明していただけないでしょうか。なかでもA社が気になります。

林教授 なるほど、君は、アクルーアルを機械的に適用することの危険性に気づいたようだね。税引き後当期純利益はマイナス100で営業キャッシュフローもマイナス50だ。この数字から会社は火の車であることはわかる。だがアクルーアルはマイナス50だ。

カノン 当期純損失ですし、営業キャッシュフローは赤字ですから。会社の状態は悪いと思います。

林教授 そうだね。問題を抱えている会社だ。だがアクルーアルの判定には引っかからなかった。

カノン 見落としですね。

林教授 というか、そもそも営業キャッシュフローがマイナスということ自体が問題なんだ。

カノン 商売をすればするほど現金が減っていくわけですからね。そんなことを続けていたら、破綻しちゃいます。

林教授 ところで、君はA社の営業キャッシュフローがマイナスになった最大の要因はなんだと思うかね?

カノン 当期純損失だからと思います。それから商品も増えていますし。