「仕事ができる人は、一文が短い」「一文を60字以内にすれば、書き手も読み手もラクになる」。そう話すのは、コピーライターとして30年以上活躍し続ける田口まこ氏だ。花王、ライオンなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラなどの化粧品を中心に、多数の広告コピーを手がけてきた。その田口氏が、伝わる・結果が出る文章をラクに書くコツを紹介した『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』が9月29日に発売となった。メール、チャット、企画書、営業・プレゼン資料、報告書など、さまざまな場面に生きる、シンプルだけど効果抜群の文章術とは? 今回は、本書の内容を一部抜粋して紹介する。
「ビタミンCが豊富」より、
「レモン3個分」のほうが実感できる
「身近な数字に例える」という文章術があります。広さを伝えるときに「東京ドーム○個分」と例えるのがそれです。この手法には、伝えたい内容を相手により実感させる効果があります。次の例を見てください。
●ビタミンC レモン3個分
ビタミンCが豊富だと伝える、食品でよく見かける文言です。レモンという親しみのあるフルーツで表すことで、ビタミンCが豊富だという事実をより実感できます。
ほかの例も見てみましょう。たとえばニュースで次の一文を見たとします。
●アマゾンのジェフ・ベゾスの資産は20兆円超です。
大変な金額です。しかし、その額が現実とかけ離れすぎていて、いまいちピンときません。それを次のようにするとどうでしょう?
●アマゾンのジェフ・ベゾスの資産は20兆円です。これを稼ぐには、年収400万円だと500万年かかります。
数字の印象がパッと変わり、すごい金額だという事実をより実感できるのではないでしょうか? この数字の見せ方を活かしているのが、長年変わらずに続いている「イナバ物置」のコピーです。
●やっぱりイナバ 100人乗っても大丈夫!
これを、成人男性の体重を一人60kg×100人と換算して「6トンの重さに耐えられます」としたらどうでしょう? たしかに耐久性はありそうですが、6トンという重さはいまいちピンとこないでしょう。それが「100人乗っても大丈夫」と例えたことで、一気に「耐久性がありそう」と実感できるようになったのです。
仕事でも使いたい「数字で例える」技術
この「例え」の効果は、仕事でも使えます。たとえば、営業資料や企画書などで数字を提示するときに大きな力を発揮します。次の例を見てください。
●【例1】システム販売の営業資料
このシステムを採用すると、年間で500万円も経費削減できます。
→このシステムを採用すると、年間で中堅社員1人分の人件費を削減できます。
●【例2】商品リニューアルの企画書(社内向け)
今回のリニューアルでは、制作コストを20%削減。利益率の大幅な向上が見込まれます。
→今回のリニューアルでは、制作コストを20%削減。これは商品1つあたりの配送費に相当します。利益率の大幅な向上が見込まれます。
数字を例える場合は、相手にとって身近であり、もっとも心に響く事例を選ぶことが大切です。たとえば【例1】の場合、業種によっては「テナント料」や「交通費」に例えたほうが実感できる場合もあります。誰に伝えるための文章なのかをじっくり考えて、例えるようにしましょう。
(本原稿は、田口まこ著『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』からの抜粋です)
コピーライター
京都府出身。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)美学美術史学科卒業後、一般企業を経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社、コピーライターとなる。大塚製薬「ポカリスエットステビア」「カロリーメイト」などを担当し、「ジャワティ」の雑誌シリーズ広告で、コピーライターの登竜門「東京コピーライターズクラブ新人賞」受賞。その後フリーランスとなり、女性向けの商品広告を中心に活動。ライオン、花王、P&Gなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラ、ランコム、フローフシ、ロート、ファンケルなどの化粧品のコピーを多数手がけ、現在も第一線で活躍中。コピーライター歴は30年以上。著書に『短いは正義』『伝わるのは1行。』(かんき出版)がある。東京コピーライターズクラブ会員。