「仕事ができる人は、一文が短い」「一文を60字以内にすれば、書き手も読み手もラクになる」。そう話すのは、コピーライターとして30年以上活躍し続ける田口まこ氏だ。花王、ライオンなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラなどの化粧品を中心に、多数の広告コピーを手がけてきた。その田口氏が、伝わる・結果が出る文章をラクに書くコツを紹介した『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』が9月29日に発売となった。メール、チャット、企画書、営業・プレゼン資料、報告書など、さまざまな場面に生きる、シンプルだけど効果抜群の文章術とは? 今回は、本書の内容を一部抜粋して紹介する。

プレゼン資料、企画書が見違える! コピーライターが使っている「二者択一」文章術とは?Photo: Adobe Stock

大切なのは、「ほどよい数」で迷わせること

 ホテルのフロントで、「明日の朝食は、和食になさいますか? 洋食になさいますか?」と聞かれた経験はありませんか? 温かいふっくらごはんと、カリッと焼いたトーストが目の前にチラつき、心の底から迷ってしまいます。

 2つのうちどちらか1つ。そう言われると、どちらにするか真剣に考えて答えを出そうとしてしまいます。

 反対に多くの選択肢を提示されると、考えるのが面倒になってしまい「全部いらない」となってしまうことがよくあります。これを証明した、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー博士による有名な実験があります。

 スーパーマーケットで、6種類のジャムを並べたときと、24種類のジャムを並べたときを比べた実験です。結果、6種類のほうがよく売れました。つまり、人はほどよい数で迷いたいのです。ほどよい数が選ぶ楽しみを生みます。

何か1つを選んでほしいなら、二者択一で問いかける

 絶対に何か1つを選んでほしい場合は、6種類とは言わず、思いきって「二者択一」で問いかけてみてください。対比することで、商品やサービスの特徴もわかりやすくなります。

 また、ウェブ記事や企画書のタイトルで二者択一を使えば、「内容が気になる」という効果も発揮します。たとえば、次のタイトルではあまり興味が湧きません。

●女性に人気のある果物はなんでしょうか?

 それを次のようにするとどうでしょう。

●桃と苺。女性が好きなフルーツはどっち?

 このほうが結果を知りたくなりませんか? 二者択一で問いかけると、相手の興味関心を引くこともできるのです。

(本原稿は、田口まこ著『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』からの抜粋です)

田口まこ(たぐち・まこ)
コピーライター
京都府出身。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)美学美術史学科卒業後、一般企業を経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社、コピーライターとなる。大塚製薬「ポカリスエットステビア」「カロリーメイト」などを担当し、「ジャワティ」の雑誌シリーズ広告で、コピーライターの登竜門「東京コピーライターズクラブ新人賞」受賞。その後フリーランスとなり、女性向けの商品広告を中心に活動。ライオン、花王、P&Gなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラ、ランコム、フローフシ、ロート、ファンケルなどの化粧品のコピーを多数手がけ、現在も第一線で活躍中。コピーライター歴は30年以上。著書に『短いは正義』『伝わるのは1行。』(かんき出版)がある。東京コピーライターズクラブ会員。