岸田総理岸田総理は、任期中に金融所得課税の見直しをする意向があるようなので、格差の是正は優先的に取り組むべき課題の一つと考えているようだ Photo:Anadolu Agency/gettyimages

「1億円の壁」は
本当に問題か

 岸田総理が金融所得課税を見直す可能性を示唆してから、日経平均株価は9月27日から10月6日まで8営業日連続で下落した。株式市場にノーを突きつけられる格好となった岸田総理は、金融所得課税の早期見直しの検討は考えていないと発言。金融所得課税の見直しを事実上、撤回することになった。

 岸田総理は後日、自分の任期中に金融所得課税の見直しを実施する意向を改めて示したが、筆者は日本の金融構造が大きく変わるまで、金融所得増税を実施することに反対だ。

 金融所得課税の見直し議論が出てきた背景には、「1億円の壁」という問題がある。

 所得税は累進性が採用されており、総所得額が上がると税率が上がる。現在の税制では、最大税率は所得税45%、住民税10%の計55%である。一方、金融所得は、復興特別税を除くと、所得税15%、住民税5%の計20%である。

 高所得者は金融所得の比重が高いため、総所得1億円を超えると税の負担率が下がる現象が発生している。こうした現象は、税の累進性に反するため、是正すべきだという考えが金融所得課税の見直し論につながっている。しかし筆者は、この考え方そのものが間違いだと考えている。