住宅ローンが返済困難になる原因は、ボーナスの減額、または不支給。住宅ローンの返済でボーナス返済を利用し、かつその金額が大きい人ほど、ボーナスが出ないことの影響を大きく受けるわけです。はじめは何とか貯金を使って支払いを続けるのですが、その分貯金が減るスピードが速くなる。そしてだんだん貯金の底が見えてくる……というように、じわりじわりと追いつめられるのです。

 住宅ローン破綻が8万人を突破などという報道もありましたが、令和2年3月10日から令和3年8月までに、住宅ローン返済の条件変更を希望された件数は、全国で約5万5000件。返済期間を延長したり、支払方法をボーナス払いなしに変更したりと、返済可能な支払い方法への変更を希望されているのです。これでも返済が困難であれば、「任意売却」を検討することになります。

子どもなし、共働き40代のDさん夫婦の場合

 つい最近相談に来られた会社員のDさん(44)も、昨年夏のボーナス支給がなかったことをきっかけに、住宅ローンの返済が苦しくなった一人です。

 妻(44)とは晩婚の共働きで、子どもはあきらめました。そのため、40歳になった時に2人で年を取っていく将来を考え、頭金に1000万円ほどを入れ、マンションを購入。利用した住宅ローンは30年返済で借入額3800万円、金利は約1%。毎月の返済額は約8万円、ボーナス払いは夏冬それぞれ約25万円です。

 どうしてこのようなローンの組み方をしたかというと、Dさんの収入は、毎月の給与はさほど多いというわけではなかったのですが、ボーナスは多く出ます。ですから、毎月の返済は控えめに、ボーナスからは多めにとしたのです。ボーナスは入社前からずっと安定して支給されており、「支給されないこともある」などとは考えたことがありませんでした。

 しかし、この度の新型コロナウイルスの影響を受け、会社の業績がガタ落ち。はじめて「ボーナスは支給しない」ということになったのです。

 妻は妻で給与収入があり、ボーナスも出ますが、ローン返済をカバーできるほどの金額ではありません。毎月の収入も、極端ではないとはいえ減っています。つまり、多少のゆとりがあった家計はギリギリの状態になっており、ボーナス払いに回せるお金は残りません。昨年夏はお金をかき集め、貯金も切り崩して支払いましたが、その影響なのか、暮らし方のせいなのか、月の家計は赤字傾向。貯金を切り崩すことも多くなりました。