「自衛隊大規模野戦病院」の設置が合理的

 私はあらためて、「自衛隊大規模野戦病院」の設置を提案したい(第283回)。医療崩壊を防ぐには、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある。それよりも、その「外側」に存在する自衛隊の医療人材・機材を加えるほうが、合理的なのではないかということだ。

 現在、新型コロナの新規感染者数・死亡者数が激減している。「第6波」が到来しても、医療逼迫・医療崩壊が起きず、自衛隊を投入しても壮大な無駄になるかもしれない。

 しかし、たとえそうであっても、自衛隊大規模野戦病院を設置する意義がある。コロナ対策のみならず、将来来るかもしれない強毒性の感染症に備える体制を構築しておくためである。

 今の医療逼迫・医療崩壊の危機に陥る体制では、より強毒性の感染症が来たらひとたまりもない。より強固な感染症対策の体制構築を今のうちにやっておく必要があるのだ。

 私は、「自衛隊大規模野戦病院」の設置を提案した際、参考としたのは、英国軍が支援して設置された野戦病院「ナイチンゲール病院」だった(第282回)。英国軍は、「コロナ支援部隊」を結成し、ナショナルヘルスサービス(NHS:国営の医療サービスを提供するシステム)を支援して、医療崩壊を防いだ。

 英国は、大英帝国だった時代から、感染症と闘ってきた豊富な経験を持っている(第49回)。また現在、英国はEU離脱後の世界戦略「グローバル・ブリテン」を打ち出し、インド太平洋地域におけるプレゼンスの強化を目指している。2017年8月には、「日英安全保障協力宣言」というべき合意文書がまとめられている。今年9月には、空母クイーン・エリザベスが横須賀に寄港した。

 このような、英国の世界戦略と、日英安全保障関係強化の延長線上で、野戦病院設置など、パンデミック時の自衛隊の支援体制について、英国のノウハウを学んではどうだろうか。