著名人や有名経営者から名指しで「あなたにインタビューをしてもらいたい」と声がかかるインタビュアーの宮本恵理子さん。これまでに取材した相手は延べ2万5000人以上。そんな彼女の「聞くスキル」を一冊にまとめた『行列のできるインタビュアーの聞く技術』が好評発売中です。本書の巻末には、実際に寄せられた「取材時の困った!」に宮本さんがどう対処してるのかをまとめました。本連載では、書籍の回答に大幅加筆し、取材の悩みに回答していきます。『行列のできるインタビュアーの聞く技術』と一緒に読み込めば、きっと話を聞くスキルがぐっと高まるはずです。
既に報じられた情報ではなく
新しい情報を相手に語ってもらうには?
質問:インタビューで既に知られている情報ではない、新しい話を相手から引き出すために、どんな下調べをしていますか?
回答:漠然と調べるのではなく、自分なりに情報を整理しながら、メモにまとめていきます。
具体的に私が拙著『行列のできるインタビュアーの聞く技術』で紹介しているのが「あなたの年表」です(書籍の中では、見本もご紹介しているので、ぜひご覧ください)。
紙やネットなどで集めたその人の情報を時系列で整理して、1枚の紙にまとめています。この紙1枚があるだけで、インタビューが充実するメリットがいくつもあるのですが、その一つが「情報の空白が可視化されること」です。
これまでに数多くのインタビューを受けている人でも、ある特定の時期に情報が集中しているケースは多いものです。「あなたの年表」を整理していると、「あれ? この3年間はほとんど情報がないな。何をしていたんだろう?」とふと発見することがあります。これが、「新しい話を引き出す質問」につながっていきます。
また、本人に近い人に事前にヒアリングするのもオススメです。
「あまり世間に知られていないけれど、ご本人が最近関心を向けていることはありますか?」など聞いてみると、新しい情報を提供いただけるかもしれません。
もう一つ、ヒントになるのは、拙著『行列のできるインタビュアーの聞く技術』でも紹介している「転がす」というリアクションです。
仕事での体験について聞けたとき、そこに、その人ならではの価値観や哲学があると感じたとしたら、「今おっしゃった心がけは、私生活でも生きていますか?」「学生時代にも近い経験があったのですか?」などと、視点を転じて聞いてみるのです。
すると、「ああ、そう言われてみれば……」と新しいエピソードを語っていただけることが多いと感じています。
いきなり「私生活での心がけは?」と聞かれるよりも、すでに発した答えから転じた質問という流れのほうが答えやすくなるのではないでしょうか。
どんなに多くの取材を受けてきた方でも「まだ話していないこと」は膨大にある。その前提に立って、探索を楽しみましょう。
『行列のできるインタビュアーの聞く技術』では、本記事で触れたような相手の話を聞くためのさまざまなスキル、相手の心をほぐして話をよりスムーズに聞くためのスキルを88、紹介しております。そしてこの聞く技術は、インタビューという特殊な環境ばかりではなく、営業や1on1、会議、面接、コーチング、採用、雑談などあらゆるシーンでも生かすことができます。ぜひ、本書を手に取ってみてください。