著名人や有名経営者から名指しで「あなたにインタビューをしてもらいたい」と声がかかるインタビュアーの宮本恵理子さん。これまでに取材した相手は延べ2万5000人以上。そんな彼女の「聞くスキル」を一冊にまとめた『行列のできるインタビュアーの聞く技術』が好評発売中です。本書の巻末には、実際に寄せられた「取材時の困った!」に宮本さんがどう対処してるのかをまとめました。本連載では、書籍の回答に大幅加筆し、取材の悩みに回答していきます。『行列のできるインタビュアーの聞く技術』と一緒に読み込めば、きっと話を聞くスキルがぐっと高まるはずです。
インタビュー相手に事前に伝える質問内容
どこまで詳しく書き込めばいい?
質問:事前にインタビュー相手に送る質問事項は、どのくらい具体的に聞きたい内容を書くべきでしょうか。漠然としていたら失礼かと思いますが、細かく書き込みすぎると、本番でがんじがらめになりそうです。
回答:私の場合、インタビューをお願いする段階では、あまり詳細な質問を送ることはありません。
相手から「質問内容をできるだけ詳しく送ってほしい」と求められたら用意しますが、聞く内容は、当日の話の流れ次第で変わることが多いですから。事前にお伝えするのは、キーワードの箇条書き程度にとどめています。
その際も「当日のご回答の流れによって、質問内容は変わる場合があります」と書き添えています。
もちろん、世の中を驚かせた移籍や独立、結婚など、ある特定の出来事について詳細に聞く目的が明確なインタビューの場合には、「何について聞きたいか」をはっきりとお伝えしますが、この場合もあまり詳細に質問を書き込むことはしていません。
なぜ事前質問をシンプルにするのか。これには明確な理由があって、事前に質問を細かく設定して伝えると、答える側の話し手も「細かい回答」を用意する傾向があるからです。
インタビューが始まる前から、「こういう質問が来るはずだから、こういうふうに答えよう」と準備する意識が働き(あるいは本人以外の周囲の方が準備をして)、インタビューが予定調和に進んでしまう可能性が高くなります。
せっかく、生身の人間同士が同じ時間を過ごしながら「聞く」「話す」という体験をするのですから、「その時間の中で、初めて生まれた答え」をできるだけ増やし、一緒に楽しみたいというのが私の願いです。
『行列のできるインタビュアーの聞く技術』では、本記事で触れたような相手の話を聞くためのさまざまなスキル、相手の心をほぐして話をよりスムーズに聞くためのスキルを88、紹介しております。そしてこの聞く技術は、インタビューという特殊な環境ばかりではなく、営業や1on1、会議、面接、コーチング、採用、雑談などあらゆるシーンでも生かすことができます。ぜひ、本書を手に取ってみてください。