安倍元首相のもう一つの懸念材料
高市早苗氏の「処遇」

 メディアに注目されてはいないものの、安倍氏にはもう一つの懸念材料がある。それは先の自民党総裁選で全面支援した高市氏の「処遇」である。

 高市氏は政治信条が安倍氏に近い保守派の政策通で、自民党に入党後は清和会に属していた。だが、2011年に当時の町村派(町村信孝会長、現安倍派)を退会し、以降は派閥に属さない姿勢を貫いている。

 退会の理由については、同じ清和会の仲間だった山本一太・現群馬県知事が12年1月22日のブログで「理由は極めて明快。『派閥内で、次の総裁選挙に町村会長を擁立しようという流れがある。町村氏を応援するつもりはないので、迷惑をかけないうちに辞めた』ということだ。いかにも、高市さんらしい!」と明かしている。

 12年の党総裁選は安倍氏が再登板することになる選挙で、清和会からは町村会長と安倍氏の2人が立候補するという異例の展開となったことは記憶に新しい。自民党ベテラン議員が語る。「高市氏は思い込みが強く、自分で『こうだ!』ということは引かない。町村派を出ていった時は『後ろ足で砂をかけた』とみんな怒って、そのしこりは残っている。最大派閥を二分した戦いが再び起きなければいいけどね」。

 自民党内でささやかれるのは、安倍氏の新会長就任に伴い、高市氏を清和会に復帰させるのではないかということだ。多くが太鼓判を押すような宰相候補が見当たらない安倍派にとって、先の総裁選の国会議員票でトップの岸田氏に次ぐ114票を獲得した高市氏の派閥復帰は本来ならば歓迎されることではある。

 総裁選での敗戦後、「私は歩みを止めません」と語った高市氏の「次」を見据えた意欲も並々ならぬものだ。