本書の要点

(1)ブランドが中長期的に愛されるには、存在理由と同時に、変化への柔軟性が必要だ。嵐は「オリジナルメンバーの5人であること」という核を守りつつ、デジタル化や音楽配信のスタート、SNS発信などといった新しい挑戦を続けた。
(2)「嵐ブランド」のコアを成すのは、メンバー5人全員がそろっていなければ嵐ではないという「5人で嵐」、そして、ファンやスタッフも嵐を構成する一員であるという「6人目の嵐」である。嵐はこのメッセージを「継続的に・繰り返し」「時期・時間軸を変えて」「語り手を変えて」「五感に訴えて」伝えることにより、効果的な発信に成功した。

要約本文

◆ブランドを嵐に学ぶ
◇ブランドは人の「頭の中」に存在する

「嵐」は、2020年をもって活動を休止したトップアイドルグループである。圧倒的な熱量による支持と消費行動を生み出すその「ブランド」は、どのようにつくられたのだろうか。

 現在、ブランドを考えるときには、4つのポイントが重要だ。1つ目は、ブランドは人の「頭の中」に存在するということである。ブランドは、そのブランドを信じ、好きになってくれる消費者(=ファン)の頭の中につくられる。ブランドとは、企業の広報発表や広告でアピールされる内容ではなく、消費者の「頭の中」につくり出されている感情やイメージ、言葉などのことなのだ。

 ブランド側がメッセージやイメージを一方的に伝えても、それが消費者の頭の中に存在しないと意味がない。商品・サービス提供者は、ブランドのファンおよびファン予備軍を徹底的に理解し、その人たちに向けて情報発信をする必要がある。

◇「誰の」頭の中に存在するか

 2つ目は、「誰の」頭の中に存在するかが重要だということである。好みが多様化している現代においては、ブランドを考えるとき、対象者の選択は非常に重要だ。対象者の選択を誤れば、ブランドはまったく別物になってしまうだろう。

 だからこそブランド側は、ほかならぬ「ファン」、そして「ファン予備軍」に向けたブランド構築を意識しなければならない。対象を絞り、貴重なマーケティング資源を集中的に投下するのだ。たとえば嵐のようなグループなら、男性アイドルが好きではない人や洋楽しか聴かない人がファンになってくれる可能性は低い。そうした人はあえてターゲットから外してみるのも戦略の一つとなるだろう。