◇共感できる「意味ある差異」が必要

 3つ目は、共感できる「意味ある差異」が必要だということだ。ファンがファンであり続けてくれたり、ファン予備軍がファンになってくれたりするためには、「意味ある差異」への共感、つまり「このブランドでなければと思える違い」を強く感じることが欠かせない。

 たとえば嵐なら、ファンに対して「嵐が他のアイドルと違うのはどんなところか?」「嵐のどんなところに共感する(心を動かされる)のか?」を尋ねると、意味ある差異がどのように存在するかを確かめられるだろう。自分のブランドのファンとファン予備軍を理解して、その人たちの共感を得られるような、意味ある差異をつくり出すことが重要だ。そうすれば、中長期的にファンをつなぎとめることができる。

◇変わらない「核」と変化への柔軟性を併せ持つ

 4つ目は、中長期的に愛されるには、存在理由と変化への柔軟性が必要だということだ。ブランドとして譲れない部分はありつつも、ファンの気持ちや変化に合わせて柔軟に対応することがブランドを強くする。

 嵐の場合、核となるのは「オリジナルメンバーの5人であること、その5人が強い絆で結ばれていること」だった。一方、デジタル化や音楽配信のスタート、SNS発信、英語を中心とした楽曲に挑戦することなど、新しいチャレンジも忘れなかった。この両方がそろっていたからこそ、長期的にブランドの価値を保つことができたのだ。

◆ブランディングを嵐に学ぶ
◇ブランドをつくれないままスタートした嵐

 嵐がグループとしてデビューしたのは1999年のことだが、当時のメンバーの頭の中には「嵐」としての存在意義や明確なイメージは存在しなかったと推測される。本人たちがその後さまざまな場で冗談まじりに語っているように、「たまたま嵐というグループ名でデビューしてしまった5人」として始まったのだろう。事務所を辞めて違う道に進むことを考えていたメンバーもおり、長く続くユニットという認識はなかったそうだ。「嵐ブランドとは何か?」という根源的な問いに、デビューしてから向き合うことを迫られた形となったと思われる。

 ビジネスパーソンも、似たような立場に置かれることがある。ある日突然、「出来上がった商品」のブランディングを任されるといったパターンだ。

 嵐はどのようにブランドを構築し、嵐ブランドのファンはどのような差異を感じたのか。著者はこれを、3つの「意味ある差異」としてまとめている。