プロ野球下剋上、巨人・ソフトバンクが最下位チームに敗れた「コスパ」上の理由巨人が失速したシーズン後半、原監督(写真中央)は険しい表情を見せることが多かった  Photo:JIJI

今季はセパ常勝球団が
いち早く失速

 今季のプロ野球公式戦は、セパ共に2年連続最下位だったヤクルト、オリックスが優勝。まさに「下剋上」が起こった。一方で、豊富な資金力で高年俸の有名選手をそろえた巨人、ソフトバンクは失速。巨人は終盤の優勝争いからいち早く脱落した。ソフトバンクは春先こそ首位を争ったが、6月に入って2位に転落するとそのまま下降し、7月以降はすっかり4位が定位置という予想外のシーズンとなった。

 ソフトバンクがなかなか浮上できなかった一因は、今季スタメンの決定を任された小久保ヘッドコーチが、不調に苦しむ松田宣浩、今宮健太らをなかなか外さなかったからだとの指摘がある。批判もわかるが、球団には、実績があり観客を呼べるこれら人気選手を先発オーダーに並べたい意向もあるだろう。しかも、実力社会の野球界には暗黙の序列があり、これを尊重するのが礼儀という認識が今もある。小久保ヘッド自身、現役時代その序列上位でリスペクトされていただけに、冷酷に主力を切れないジレンマもあったのではないか。

 その点、優勝したオリックスは、高年俸選手が一部不調だったが、活躍すべき選手は順当に活躍してくれた。不調の選手も、切りづらい状態でなく、実績のない若手を大胆に起用する環境が整っていた。そんななかで、抜擢した若手が期待以上の活躍を見せ、優勝までたどり着いた。

 それにもうひとつ、ヤクルト、オリックス共に、2年連続最下位とはいうが、昨季だって優勝を予想する声もあったくらい、戦力は充実していた。残念ながら去年までは開幕すると波に乗れなかったが、その結果の方がおかしかったと考えられるチーム力はあった、ともいえるだろう。