ここ数年で時々目にするトピック。それが「習っていない漢字を使ってはいけない」という、主に小学校で指導されることのあるルールと、その賛否についてである。テレビやネットで度々取り上げられているということが、問題視されている程度の強さを示している。つまり疑問に思っている人が多いのである。(フリーライター 武藤弘樹)
正解でも「×」になる悲哀
名前も平仮名で書き直し?
漢字に興味がある子どもやよく読書(マンガを含む)をする子どもは、まだ習っていない漢字をすでに覚えていることがある。そしてその漢字を使ってテストで回答を書くと「習っていない漢字が使われているから」という理由でバツになる……といったケースが往々にしてあるようだ。ちなみに算数の解き方についても、中学受験用に習った(学校では教わっていない)公式などを使って解くと不正解になることもあるようで、つい先日Twitterで議論になっていた。
自分の名前は、「習っていない漢字」が使われる場合がある最たるケースであるが、これも使うと叱られたりするというのだ。その場合、習っていない漢字は基本的に平仮名で書くので、「よし田」という具合に、まあ大人からするとあまりしっくりこない表記を取ることになる。
Twitterで、ある人がこの様子を「料亭のような名前を書かされていた」とユーモラスに表現していたが、そうちゃかさないと、やっていられないくらいの理不尽さを、「習っていない漢字は使用禁止」ルールに覚えている人が多いわけである。
筆者も、そのルールをすこぶる奇妙に感じる一人であった。子どもの知的好奇心や成長の機会を否定することを上回るメリットが、はたしてそこにあるのか。しかしそれだけ奇妙なルールが連綿と続けられているということは、一般人には想像しえないような、教育の現場を知る人からすれば正当性を感じられる理由があるのではないか……と思い、独自に調査を試みた。
そこで、本稿では以下のことについて、かいつまんで紹介していく。
・このルールは、どれくらいの程度で指導されているか
・文科省「学習指導要領」にはなんと書かれているか
・親、および子どもの反応
そして最後に、これらのことを踏まえてこの問題は、どう取り組まれるべきかを考えてみたい。