これに対し米ファイザー社は当初から、ワクチンの効果に自信を示してきた。同社幹部のラルフ・レネ・ライナート氏は12月2日、同社ワクチンはオミクロン株に対して「効果が著しく低下するとは考えていない」とした
※ブルームバーグ『ファイザー幹部、オミクロン株へのワクチン効果楽観-約2週間で判明』(12月2日配信)

 ただ、オミクロン株の感染を防ぐには、3回接種が必須のようだ。

 12月8日、同社は3回接種であればオミクロン株の感染も防げそうだとする暫定的な研究結果を公表した。ファイザー接種者の血液を使った実験で、3回の接種によって、オミクロン株の感染を防ぐ抗体量が2回接種の25倍に増加。従来株に対する2回接種後とほぼ等しい効果が望めるとした。

 なお、ファイザー接種者12人の血液を使った細胞実験では、2回接種で生じる抗体だけではオミクロン株感染を防げないことも報告されている(12月7日)。

 それでも同社は、2回接種でもオミクロン株感染による重症化は防げるとみている。あるいは、過去に新型コロナ感染経験がある人がファイザーを接種していた場合は、その抗体はオミクロン株の感染を予防できるという。

 ファイザー社は、来年3月にオミクロン株に対応した最新型のワクチンを供給できるとしている。また、いずれにしても接種は「今後何年にもわたって毎年必要になる可能性が高い」と、同社CEOのアルバート・ブーラ氏は定期接種化の必要性を指摘している
※BBC『新型ウイルスのワクチン接種、「毎年、何年間も必要に」 米ファイザーCEO』(12月3日配信)

モデルナの効果は「はるかに低い」可能性
それでもワクチンは無意味ではない

 米モデルナ社の見立ては厳しい。CEOのステファン・バンセル氏は11月30日、オミクロン株に対する同社ワクチンの効果は、従来株に対するより「はるかに低い」との見通しを示した。オミクロン株に特化したワクチンを大規模に製造できるまでには、数カ月かかるとしている(フィナンシャル・タイムズ)。

 やはり免疫をすり抜ける能力の高さには、相当の警戒が必要のようだ。では疫学的な視点ではどうだろう。公式発表はないが、考える手掛かりはある。

 南ア医学研究会議によれば、12月2日時点のコロナ病棟の入院患者38人のうち、6人がワクチン接種を受けており、24人が未接種、8人が接種状況不明だという。また、新型コロナによる肺炎患者9人のうち8人は未接種で、子どもは1人だった。

 オミクロン株の割合は、11月中に急速に7割以上に達した。Our World in Dataによれば、南アで接種されたワクチンの内訳は、ファイザーが約58%、モデルナ約38%、ジョンソン・エンド・ジョンソンが約4%となっている。

 母数が極端に少ないが、入院患者の接種状況に照らしてみると、オミクロン株への効果は皆無とまではいえないようだ。

 WHOのマイケル・ライアン氏も7日、オミクロン株がワクチン接種で得られる免疫を完全に回避する可能性は「非常に低い」とAFP通信に語った。

 オミクロン株発生前の9月時点の米国では、ワクチン接種者に比べて未接種者の感染確率は5.8倍、死亡確率は14倍だった(CDC)。オミクロン株の出現によってこの数字が世界的にどう変わるか、注視していく必要がある。