北京五輪で相次ぐ外交的ボイコットの是非、真に講じるべき「対応」とはPhoto:China News Service/gettyimages

来年2月の北京五輪に対して「外交的ボイコット」が相次いでいて、中国が反発を強めている。しかし、米国など、アングロサクソンが中心となった自由民主主義陣営が中国に対して包囲網を張るという構図は、「基本的人権を尊重する」というスタンスと矛盾もはらんでいるのではないか。基本的人権はイデオロギーに関係なく、普遍的なものである。今のボイコットの形は果たして正しいのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

アングロサクソンの主導する「自由民主主義」と
中国中心の「権威主義」

 米国は、新疆ウイグル自治区やチベットでの人権侵害、香港での民主化運動の弾圧などに対する抗議として、来年2月に開催予定の北京冬季五輪に、選手団以外の外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を断行すると発表した。

 これに呼応し、オーストラリア、英国、カナダが相次いで外交ボイコットを表明した。一方、24年に「パリ五輪」を開催予定のフランスは外交ボイコットをしないと明言している。

 中国は「外交ボイコット」に対して、「五輪を政治利用する誤った行動」と強く反発している。新疆ウイグル自治区での「強制労働」などについては、「まったくのデマ」であると切り捨てた。そして、「民族の繁栄と安定、団結を破壊し、中国の発展を抑制しようとしている」と主張し、「断固たる対応を取る」と警告している。

 今回の「外交ボイコット」は、中国の人権侵害に対する抗議として、いいやり方だと思わない。

 現在、外交ボイコットに同調したのはアングロサクソン諸国だけだ。米国は「民主主義サミット」も開催し、約100カ国が参加した。だが、中国、ロシアなど「権威主義国家」を招かなかった。

 これだと、人権侵害の問題が「自由民主主義vs権威主義」という、異なる政治体制やイデオロギーの争いとなってしまう(本連載第263回)。だが、「基本的人権の尊重」は、本質的に政治体制やイデオロギーとは次元が違う問題だ。