店員に「お愛想」は失礼?飲食店の「隠語」を客が使ってはいけないワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

今年11月、宮城県登米市の子ども園に刃物を持った男が侵入する事件があった。このときに活躍した合言葉が「いかのおすし」だ。もちろんこれは「イカのお寿司」を表す言葉ではない。このような隠語は、飲食店にも数多く存在する。隠語を通して、飲食店の文化や歴史を考えてみよう。(講演・研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント 新山勝利)

刃物男侵入でも、けが人ゼロの理由
合言葉は「いかのおすし」

 今年11月9日、宮城県登米市の子ども園に刃物を持った男が侵入した。このときに活躍した相言葉が「いかのおすし」だ。不審者に気づいた職員が「いかのおすしが届きました」と声を掛け、無事に園児を避難させた。

 この言葉の誕生は、2002年にさかのぼる。当時、児童への誘拐殺人事件があり社会問題となっていたが、不審者から身を守る学習が確立されていなかった。そこで、東京都教育委員会で生活指導担当であった若林彰氏(現・有明教育芸術短期大学学長)が、東京都内の全ての小学校1300校で、不審者対応の学習を実施することになった。

 そこで誕生したのが「いかのおすし」だ。5つの約束の頭文字を組み合わせた標語だ。

知らない人にはついて「いか」ない。
知らない人の車に「の」らない。
危ないと思ったら「お」おきな声を出す。
その場から「す」ぐ逃げる。
大人の人に「し」らせる。

 その後、学校での防犯教室(セーフティ教室)などを通して、全国の保育園や幼稚園、小学校でも採用され、防犯対応メディアやポスター掲示などにも広まった。